速報_1

『えー現在、アウロクスの暴走を引き起こしたと思われる密猟者たちを、騎竜隊が追っている、との情報が入りました!』


 遠写鏡に映る映像はスピラ村からの放送を終え、報道局からの放送に切り替わっていた。女性アナウンサーが画面上部を流れていく速報と同じ内容を、高い声で告げる。


 遠写鏡には、3人の男の顔が表示された。


『容疑者の名前は、サイレス・ドントン、メルクーリオ・アベイゾ、ジャーニス・ナルフスス……』


 顔写真の下に記された名前を、女性アナウンサーが読み上げる。名前の横に括弧で補足された年齢は、どの男も20代前半であることを伝えていた。


『男たちは狩猟が禁止されているはずの《ドルラメド国立自然保護区》にて、魔法による狩りをおこなったという疑いがあります…… それにより本来、大人しい気性であるはずのアウロクスがパニック状態となり、今回の群れによる大移動を引き起こした、と専門家たちは予想しています』

「そんな、まさか……」


 報道を見たバームが呟く。驚きに目が見開かれていた。彼の視線はモニターに映る容疑者たちの顔を見る。


『しりあい?』


 ラズリーが手のひらの立体映像を展開し、バームに問いかける。少女の目はどこか薄暗い。


「いや、ただ…… こいつらとは、5日くらい前に会った。ラメドっていう小さな村の、酒場で、ヤツらに少し絡まれた。だが…… まさか、密猟までするとは……」


 バームは思案するように顎を指でなぞる。言葉の末尾が掠れて消えた。


 男の目はラズリーを見て、迷うように揺れた。


『現在、男たちは《ラメドアイ峠》を魔導車で逃走しており、騎竜隊が追跡しているとのことです。 ……ラメドアイ峠は小回りの利くランナーリザードが得意な地形ですからね。捕まるのも時間の問題でしょうか?』


 アナウンサーの後半の言葉は、スタジオに同席する他のキャスターや芸能人たちに向けられていた。


 遠写鏡を見ていたラズリーがソファーから跳ねるように立ち上がり、走り出す。


「お、おい!」


 突然、飛び出したラズリーをバームは呼び止める。少女は急停止し、迷惑そうな顔で振り返る。バームもソファーから立ち上がり、少女に近づく。


「急にどうした?」


 尋ねられたラズリーは手のひらを差し出す。人差し指をせかせかと動かして文字を打つ。

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