第1章

少女と崩壊する村_1

 ひっきりなしに轟音と悲鳴が聞こえてくる。


 地面は絶え間なく揺れて、どこからか獣の咆哮が聞こえた。


 少女は強烈な鉄の匂いと土煙に、口と鼻を塞ぐ。逃げ惑う人々や崩れ落ちる建物の間をふらふらと歩いていく。


 空は薄暗く、霧のような雨が降っている。降り続ける雨により地面はぬかるんでいた。


 そして、ぬかるんだ大地の上…… 幼い頃から見慣れた風景が、今では瓦礫がれきの山と化していた。


 少女はもはや、自分の家がどこにあるのかも分からなくなっていた。自分がどこを歩いているのかすら分かっていない。


「お母さん…… プーラ…… どこなの?」


 口から零れた家族を呼ぶ声は、周囲の騒音にかき消されてしまう。


 誰もがパニックに陥っていた。誰もが少女の声など気にかけることはない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る