第45話バッティングセンターのゴールデンボール

たまーにだけど、バッティングセンターに行く事がある。私は趣味でバットを持って河原に行き、小石を遠くへ飛ばすのが大好きだ。金属バッドと石がぶつかった時のガキンって音がたまらない。遠くへ飛んで行くのを見ると、なんだか気持ちがスッキリする様な感じに浸れる。こっちの方が経済的には良いのだけれど、向かって来る剛速球に挑み多くの球を打って飛ばす、こっちの方がドーパミンがジャブジャブ出てくれるのだ。掠りっぱなしだとストレスになるけどね。


何時もみたいに中速の130キロコースに挑んでいると、ウエーイってしている人達が150キロのコースで遊んでいた。あの人達はほんと、一喜一憂が凄まじい。当たれば一気にウーエイ!指笛ピュイー♪、外せばブーブー言いながら親指を下に向ける。私も内弁慶ではなくこんな感じに、感情豊かに、ノリと勢いだけで生きていけたらと思っていた。なんて思っていると、私の方に急に関心が向いてボールが来るのに構えている時に「お?おお!?」っと煽りを入れて来た。やっぱり訂正、こんな感じには生きたくない。


すると、中でも一番チャラい人の番になった。彼はバウントの構えをしていた。ボールが当たった瞬間、バットを投げ捨て急に走り出した。中に入るのは禁止だし、なにより危ないのに。仲間も回れ回れなんて応援している。「バウントランニングホームラン!」と叫びながら全力疾走。私も含めて真面な人達は下手に飛んでくるボールを打てず、ケガしちゃわないかヒヤヒヤしながら見ていた。


無事ランニング達成した奴等はめっちゃ喜んでいた。いや、勘弁してくれよと私は思った。その後もまたバウントの構えをした。私や他のお客は打つのを止めて、彼の危険なランニングにまた付き合わされた。無事ランニングを達成し、ピョンピョン跳ねながら喜んでいるうちに、彼はストライクゾーンの方に体が移動していた。そして…ピョーンとジャンプした時に、睾丸めがけて150キロが飛んで来た。私にはハッキリと聞こえた。金玉と恥骨に激しくボールがめり込む「ドチッ!」って音を。


「~~~!!!!」って声にならない藻掻きをしている彼。ギャハハハと笑っている連れでしたが、彼の金玉がほんと信じられない位に腫れ出したんです。タンタン狸の金玉は~♪って歌がありますが、それくらいに腫れ出しました。金的は格闘技の番組でもたまに見かける光景ですが、そこでも見た事のない光景です。爆笑問題の田中さんが草野球で玉を失くしたエピソードがありますが、こういった強打だったのだと思いました。


彼らは「おい!しっかりしろ!」と声を掛けるので精一杯だったので、私はお店の人を呼びガチガチに冷やすものを用意させ、別で遊びに来ている人は救急車を呼ぶ手配をしてくれました。その後はどうなったか分かりません。気分が悪くなって途中で帰ってしまったのです。「生理は辛い!それを男性は分からないでしょ!」って言っていた自分は酷い奴です。あんなん見せられたら、生理なんて…と思ってしまいました。彼の金玉が壊死してなければ良いですけど…。

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