第29話なんでお前は生きてるんだ?(怒り編)

多分ね、精神も病んでる人だし基本働いてないような人間なんですよ。だから、ずっとそいつからのメールが来ている状態だったんです。ムカつくんですよほんと「やぁ」「おはよう」「調子はどう?」反応が欲しいから細かくメールして来るんですね。信頼出来る人になれって言ったのを分からないのか?「連絡先を教えて!」「声聞きたい」「反応してよ…」「死んでやる…」こんなのを直ぐに送って来るんですね。今思えば、着信拒否にしてポイってすれば良かったんですけど、お人好しというか…看護師を目指している人間の性というか…変に構い過ぎてしまったんです。寝不足になりながら対応していました。私のせいで死なれても困るってのもありました。とにかく、ストレスを抱えながら何カ月も接していました。そんで、「なんど言っても会ってくれない!死んでやる!」とめちゃくちゃ手首を切った画像を送ってきて「ふざけんな!そんな人間と会えない!剃刀で斬られるかも知れない!」と怒って連絡しない事に決めました。最後に「死んでやる、お前のせいだ…」と捨て台詞を吐かれ連絡の来ない日々を過ごしていました。


そんな中で東日本大震災に遭いました。私の住んでる所は大丈夫でしたが、山を一つ越えると倒壊してる町、死体の山がゴロゴロ転がっている、暴徒と化している人が沢山いるような状態でした。私の知ってる人も何人か絶望的な状態だと聞いてるけど、落ち込んではいられないと奮い立たせて生きていました。電波は壊滅で常に圏外の状態だったんですが、たまたま携帯を見た時に2本電波が伸びている事がありました。近所の人に教えて、急いでメールの受診と返事を可能な範囲で行っているとあいつからのメールが入っていました。内容は「大丈夫ですか?」だった。私は良かったとは思わなかった。今までそいつに感じていた不満が爆発してしまったのだ。


「お前、人に散々構わないと死ぬとか言って何生きてんだ?私の周りでは死んでる人がゴロゴロ転がってるのに、なんで死にたがりのお前が生きてるんだ?良いよ、会ってやるよ!明日〇〇に○○の格好でいるから来いよ!死にたがりのお前をぶっ殺してやるよ!どうせ、その辺に死体が転がってんだから、どさくさにお前ひとりぶっ殺したって分かんねえだろうからな!」と返信しました。その後、電波が悪くなり返事は来なくなりました。次の日、まじでやるつもりだったのでその場所に向かったのですが結局現れませんでした。


感じの悪い話だと思う。これから言う事もそう。この出来事があったせいなのか、私は精神病院の看護師をやっているけど、実は生きてるのが辛いと言いながら手首を切ってる奴の神経が分からない。正直、嫌悪している。生きてる人にも死んでる人にも失礼な行為だと思う。どちらにも向き合ってない。考えてないからこんなことが出来るんだと思っている。私はどっちかに振り切れと怒りが湧いてくる。自分で決める自分の生死に、宙ぶらりは許されない。私だって嫌な気持ちになるし、死んじまいたいと思うことがある。でも、生きてやると思ってる。もう駄目ならスパッと死んでやる。わざわざ、病んでます。助けて下さい。SOSなんて出さずにスパッと死んでやろうと思っています。結局、彼からの連絡はその後来なかった。死んでいるのかも知れないけど、私は別にそれならそれで構わない。生きているなら強く生きてくれとは思う。多分、強く生きてる確率は0に近いと思うけどね。私は、彼の生き死によりも、生きたかった人が、生きて欲しかった人が生き残れなかった方が今でも重大だと思っている。

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