第27話水切りを初めて知った男の成長記録
前回の縁の話と繋がっています。私の知人のAさんは現在30代の方なんですが、運命の悪戯なのか”水切り”という遊びを全く知らないで育ったそうです。もし、この場に水切りを知らない人がいたら簡単に説明しますと、水面に向かって回転をかけた石を投げて、水面で石を跳ねさせる遊びです。場所によっては石切りとか若干の言葉の違いはあるそうですが、意味は一緒です。Aさん、別に都会っ子ではないです。私の住んでる所と一緒で、山と川に溢れた場所で育っていました。環境的にはやっててもおかしくないとは思ったんですけど、これも縁なんですかね。
実際、水切りって遊びの優先順位としてはかなり低い所にあると思うんです。水切りを選択するまでの間に、色んな遊びがあるんです。恐らくですが河原で水遊びとかをしていて「あー次、何しようかー」って喋りながら開始。たまたま上手くいった時に「おお!俺もやってみる!」って形で始まると思うんです。もしかして、言葉を知らないだけで水切り自体はしていたのか?と聞きました。「いや川に何となく石をぶん投げて、ドッポーンってなるのを面白がってる事はした。」だそうで、Aさんの周りも水切りを知らなかったそうです。テレビやyoutubeで水切りの世界新記録を目指すなんてのを私は見た事はありますが、Aさんはその縁すら無かったそうです。
Aさんが水切りを知ったのは30歳なりたての時、会社の飲み会で小さい頃にやってた遊びを上げていく事になったみたいです。その時に同僚が「水切り」と言った時に「いやいや待てよ…それは、ラーメン作る時だろ!しかも言うなら湯切りだろ!」って言ったら、「Aさん…マジすか?」となって知ったそうだ。Aさんはもう信じられなかったみたいで、石が水を跳ねる?そんな事ないだろ!って状態でしたが、スマホで水切り動画を見て驚愕!「水切りすげえ!めっちゃ跳ねてる!てか滑走してる!」と感激したそうです。それからAさんはインドアで運動不足になりがちって事で、水切りを趣味にしようとしたそうです。
ただし、Aさん。致命的に水切りの才能が無かったみたいです。小さい事でも才能は絡んで来るんだなと痛感しました。何回やっても、一直線にドッポーン!とするみたいで嫌になって来たそうです。おかしいなぁ…と試しに小さい石を投げたら、3段行ったそうです。「そうか!」とAさんは確信しました。「小さい石の方がよく跳ぶんだ」と。はい、Aさんの中では大きい石であるほど、野球ボールに近い形であれば投げやすいので遠くへ行くと思っていたのです。寧ろ、極めた人がやりそうな行為を最初からAさんは行っていたのです。分かったとはいえ、全く上手くいきません。偶然の2段は出たりしますが、まだドッポーンです。何が悪いんだと試しにアンダースローをしたら、大きく石が5段跳ねたそうです。Aさん!また感激です。「そうか!動画の奴らはたまたまじゃなくて、これが基本の飛ばしやすいフォームなんだ!」と。Aさんは石を水面に投げつける形で行っていたそうです。天然なのか要領が悪いのか、他の人はあまりしない苦労をしながらAさんは、何年も水切りをしました。そしてある日、川の向こう岸まで石を滑走させる事が出来るようになったそうです。水切りのし過ぎで腱鞘炎になりながら、手にタコや血豆を作りながらの日々が実りました。
やり切ったAさんはそれから、水切りから離れた生活をしていたそうです。ですがある日、友人たちとバッティングセンターに行ったそうです。そこは他にもゴルフの打ちっぱなしや、ストラッカーアウト等もある施設でした。ストラッカーアウトは全部を撃ち抜くと1万円の賞金を貰えるらしく、今まで達成で来た人は0人だったそうです。Aさんはまぁ、俺がやれるわけないよなと軽い気持ちでやったそうです。そしたら9か所全部を1発も外さずに撃ち抜いてしまったそうです。別の日に今度は独り出来てみました。あれはまぐれかも知れないと思いながら投げました。1発外したけど決められた球の中で全て撃ち抜くことが出来ました。どうやらAさん。水切りの練習をしているうちにプロ級のコントロールを身に着けていたみたいです。こうしてAさんは連続で1万円を取りに行ってたのですが、お店側から「殿堂入り」という扱いで事実上追放されてしまいました。ですがこれに味を占めたAさんは、各地の賞金付きのストラッカーアウトで稼ぎまわる様になり、多い時は1日で10万円を稼ぐこともあるそうです。
自分は何も才能が無い。あいつは天から二物を与えられてると感じる場面があります。ですが日頃行っている事が、突如大きな才能となって現われる事があるかも知れません。納得のいく才能かは分からないけど、どうか悲観しないで欲しい。無能な人なんていないのだ。
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