第9話混ぜるのが大好きなお父さん

うちのお父さんは混ぜてご飯を食べるのが大好きだ。大きな丼にご飯を装い、味噌汁をぶっかける。そこに大量の調味料やおかずをぶっこんでかき混ぜていく。端から見ると、ゲロみたいな状態の丼をズルズルと口に運んでいく。とても美味しそうに食べているが、調子の悪い時にはあまり見たくはない。でもこの食べ方をずっと見てるせいか、吐瀉物や排泄物への耐性は付いている。上でも言った通り、積極的に見たいわけでは勿論ない。こういった食べ方をするのは昔からの癖だそうで、理由もあるらしい。どうやら、美味しいもの+美味しいもの=もっと美味しいものになるそうだ。分からなくもないが、分かりたくもない気がする。


だからお父さんは、ビビンバや鍋が大好きだったりする。食材がギュッと詰まってると食欲が湧いてくそうだ。私たち子供にもそのDNAは受け継がれている。混ぜ込みの料理が出て来ると食が進んでしまう。またお父さんスタイルをやって食べると結構、ズルズルと行けてしまう。闇鍋とか、そんなに沢山はやったことないけど友達皆がオエーとなってるのに、自分だけ平気だったのは間違いなくお父さんの影響だと思われる。


お父さんはお酒も好きである。お父さんが飲み飽きた酒や飲料水を混ぜて出来たどす黒いお酒を、「暗黒無理焼酎魔改造」と家族で呼んでいるがここでは敢えて話さないでおく。


犬猫を飼っているお家で分かってくれると思うんですが、ご飯はカリカリのフードがメインだと思われます。だけど人と同じように味や触感に飽きてしまい、どんだけ置きっぱなしにしても「私は飢えを選びます。」と、この姿勢を崩さないことがあります。そうなって来た時に選択として出て来るのが、犬猫専用の缶詰か、残り物ご飯になって来ると思われます。私の家ではカリカリフード→残り物ご飯→専用の缶詰の流れでした。


ワンちゃん、ニャンちゃん専用のお皿を用意して、古ご飯と味噌汁を混ぜ込んだ後に、おかずを乗せて出来上がりです。私は結構、手間暇を掛ける方でミキサーで混ぜた後に、お団子を作って揚げたり、ハンバーグみたいに焼くのが好きだったりします。


ある日、鍋だったんです。


お父さんは仕事が遅いから、外食してくるとのことでした。皆で食べた後に、犬猫の為に残飯雑炊を作る事にしました。冷蔵庫にしまった古くなった食材や料理を詰め込んで作りました。古ご飯、味噌汁、賞味期限過ぎてた肉やサラダ等ぶっ込みました。出来上がって過ぎに出すと、熱いってのを理解してくれないみたいで、火傷しながらガツガツと食べる羽目になっちゃうので、適温になるまで茶の間で寛いでたらお父さんが帰ってきました。お父さんは茶の間に顔を出した後に、台所へ向かいました。(何時もみたいにお酒と摘みでやるのだろう…)と皆が思っていました。


そろそろ良い頃合いかなと思いお母さんが台所に行くと、「ギャーあんた、何してんの!」と悲鳴が聞こえました。私達も台所に向かうと、残飯雑炊が空になっていました。明らかに雑炊の具材としてはおかしい、ヒジキも入っていたのに、全く気にしないで食べやがったのだ。お母さんと一緒に尻尾を振りながら着いていった犬猫はマジ切れです。お父さんの脚やら太腿やらを噛み付きます。そこにお姉ちゃんがバウリンガルを持っていきました。


吠える犬の声を認識させます。ピピッ!「おかえりなさい」でした。怒りながらも歓迎出来るのはとても立派です。それに比べてお父さんは…。まさか、犬猫用のご飯と識別が付かないとは思わなかった。「これ、俺のご飯?」と聞いて来る事があったけど、マジで言っていたようだ。


それからお父さんは何かを混ぜて食べる時に、畜生飯を食べていると呼ばれるようになった。

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