第8話バイオレンスエリアの頑固親父のラーメン屋(廃業編)
ラーメン屋としての強い拘りを持ちながらもそれを提示せず、理不尽に怒鳴り付けるラーメン屋さんは繁盛した。麺類が苦手な私が胸糞悪い気分で一口しか食べてなくても、美味しいと感じるものを提供していたからだ。接客は本当に糞だけど、胃袋は確実に掴むお店だったのだ。お店の理不尽な作法は、口コミで徐々に公開されて、次第に皆が最初からそれに対応する状況での来店になった。こうなって来ると、最初の理不尽が正当化されて行く状態になる。知らない奴はうちに来るな、出来ねえ奴は出ていけ状態である。こうする事で、質の悪い客を落として崇拝する客だけを集める。カリスマラーメン屋へと変貌を遂げたのである。
だけど、考えて欲しい。
これがウリのお店は減少している最中なのだ。その理由はやっぱり理不尽な拘りであり、美味しいのだけれど楽しく落ち着いて食べられないのである。やっぱり気持ちが落ち着く場所でもないと食べたくないのだ。
分かってくれる人だけが来いってスタイルは破滅的だと思う。厳格な店内作法は色々な尾鰭が付いて泳ぎ出した。実際なのか、嘘なのか分からない批評が出だし嘘の店内作法が出回り、初めての人を混乱させて足を遠のかせた。それに崇拝している人だって常連とはいえペースがある。ずっと食べてたいと思える感動も何時までも続かない。やがてそこらのラーメン屋と同じ頻度になる。潰れていく頑固親父のラーメン屋は恐らくこんなもんである。
そして一番の問題は、私の町の人々は気性が荒い人が多いのである。私が思うにこれは本当に間違えていると思う。少しでも人間に粗さが少ない仙台とかで開けば良かったと思う。俺のルールを押し付け過ぎたラーメン屋は崩壊しようとしていた。
ある日、遂に警察沙汰になったのである。
店員&常連客VSヤンキーの壮大な喧嘩である。何も知らないヤンキーにいつも通り店員が怒鳴り付け、親父の拘りを理解出来るのは俺だけ系の客からも文句を言われた事から、大きな喧嘩へと発展してしまった。結局、ヤンキーがパトカーに連行される羽目になったのだけれど、これが切っ掛けで恨みのある人達が一気に爆発したんだと思う。
口コミサイトでは、嘘の作法と接客エピソードが爆発的に蔓延し出した。そして、どこで仕入れたのか店主や店員情報が漏れだし、こんな場所であんなことしていた等、ある事ない事を徹底的に書かれた。最初は営業スタイルでやっていた厳格な姿勢に、アンチがいたら取っちめてやる!といった怨念が出始める。何もかもが敵に見え始めていたのだと思う。見掛けがヤンチャしてる格好だと入店する事すら出来なくなり、真面目に通ってる人や子供にも強くそれを求めるようになり、常連客も流石に通いづらさが出始めて足が遠のき始めた。それでも来る人達も僅かにいましたが、値段の高いラーメン屋だったので、カツアゲスポットにもなって来なくなりました。
その中で店や住まいに直接の被害を与える人たちまで現れた。店内に入って罵声を浴びせて出ていく集団。閉店時に店の前に生ごみやペンキぶっかけて汚す集団。警察に相談し、パトロールのメインになるも、爆竹と煙球を投げ入れられる、騒音を出され続けるなど、様々な嫌がらせが連日で行われるようになった。
その結果、僅か1年でお店を廃業する事になった。客が遠のいた状態で、嫌がらせの為に常に怖い人達がうろついている。怖くては入店が出来ず、入ろうとしても追い返される。仮に入店出来ても、敵味方が分からなくなった店主から追い出される事もある。こうしている間に、プライベートでも追いこまれた店員が根を上げて辞めていく。地域の人達と歩み寄りましょうと説得しても、曲げない店主に切れて辞める。そして、住まいにも嫌がらせをされて疲れ果てた奥さんが家を出て。店主は独りだけで営業をする事になり、店を潰したそうだ。
この嫌がらせも、何処までが本当かは分からない…。だけど、別件で通りかかった時に実際、爆竹を放り込まれていたので、結構、嘘でしょ…と言いたくなるものでも行われていたと思われる。そして店主さん…完全に精神ぶっ壊されて、私が勤めていた精神病院で幼児退行して入院していました。
世間では孤高の存在やオリジナルティ、縛られずに好きに生きる。型の無い人生や同じことをしたくない人達ってのがいると思うし、誰でもその一面があると思うんです。別に悪い事ではないと思う。それが出来てるのは勿論、自分がそうしているからってのもあるけど、誰かがそれを許して上げれているからだという事を忘れない方が良い。好き勝手に生きていけてるのは、自分だけの力じゃなく、必ず誰かと触れ合って生きているから成り立ってると思う。その辺の事を考えないで相手を粗末に扱って押し付けていると、何時しか取り返しのつかない人生、憧れられない人生になるでしょう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます