29 いじられ道中



 荷物を馬車に積み込んで、およそ半日。

 その馬車の中でがたがた揺られながら、旅の目的地に到着するのを待っている最中です。


 目的地は、観光名所として有名な場所なので、多くの人が利用しているそうです。


 とっても楽しみですっ!


 目的地は、青い外壁がとってもブルーで素敵な観光の町。

 レトロブルーと言います。


 だけど、私の心の声が知らない間にもれていたようです。


「子供がかく感想文みたいな表現だったな」


 ご主人様は私の頭をこづいてニヤニヤ。

 面白い話のネタを一つ提供してしまったみたいです。


 ご主人様、私のこと社交界で言いふらしてるんですよね。


「珍しいメイドを雇った」とか「異世界から来たとかいう頓珍漢な事をいう娘が~」とか「からかうと面白い」とか。


(私は反応の良い玩具じゃないのに)


 頬を膨らませていたら、何を考えたのかご主人様は私の耳に向かって息を「ふぅーっ」としてきました。


「反応は良いだろ、チヨ。ほら」

「へにゃあっ! ふわわわわ、やめてください~っ!」


 馬車の中で退屈していた他の使用人さん達が、どっと笑い声をあげます。


 使用人さん達を気遣うのは良いですけど、私を弄って楽しませるのは止めてくださいっ。


 荷物用に用意された他の馬車に乗せてもらいたかったです。


 半日もいじられっぱなしじゃあ、私の身が持ちませんっ。


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