26 遊び相手のカイネ君



 じっと見てたら、カイネ君に気づかれてしまいました。


「チヨ姉。何で俺の耳見てるんだ?」

「えっ、見てないです。見てないですよ~」

「嘘だっ。絶対見てた。捕食者の様な目で見てた。俺の耳狙ってただろ」

「狙ってないですっ、そんな事ないですっ、いいがかりですっ。そういう事いうと、この間カイネ君が間違えたお仕事、報告しちゃいますよっ」

「なっ、ずりぃっ!」


 頭に生えている耳をおさえて背後に後ずさるカイネ君。


 獣人の使用人さんはめずらしいですから、皆にもふもふふわふわを狙われてちょっぴり疑心暗鬼になっちゃってます。


 でも、使用人さんの中にはそういうカイネ君の仕草を見て「たぎる」とか「そそられる」とか言ってる人がいるみたいです。


 私にはどういう部分が「たぎる」で「そそられる」のか分かりませんけど。


 でも、警戒しながら、尻尾をぴんと立ててるカイネ君が何だかとっても可愛く見えて、もうちょっとだけ意地悪したくなっちゃうのです。


 獣人という種族は、満月の夜になったら遠吠えしたくなったり、ボールを見たらおいかけたくなるそうです。


 だから、私の華麗なボール投げテクニックで、酔わせてメロメロにしちゃいますっ。


「カイネ君っ、お昼休憩になったらボールで遊びましょうっ」


 私にとってカイネ君は、とても良い遊び相手ですっ。


「子供扱いするなよな、姉ちゃん。俺は一応先輩なんだから」

「私が遊んで欲しいんですっ」

「えっ、そっ、そうか? それなら問題ない、のかな???」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る