27 鏡に映らないリア姉さん



 そこに、通りかかったリア姉さんが注意してきます。


「こらこら、まだお仕事中でしょう? そういうお話は、後にしなさい。ねっ?」


 私が働いているお屋敷の、とっても頼りになるお姉さん。


 その名もリリアーヌ・フレグランス・ファイブオーダー。


 こちらもかっこいい名前ですよね。


 意味は良くわかりませんが。


 よく使う名前はたぶん一番最初のものなんでしょうけど、あとの二つは家名?


(あとで機会があったら、五樹仁様に聞いてみよう)


 とりあえず通称は、リア姉さんです。


 リア姉さんはしっかりもので優しくて、余裕もあって包容力もある大人の女性です。

 それでいて、ぼんきゅっぼんの、出るとこは出て引っ込むところは引っ込んでる、ないすばでぃーで、ぐらまーなお姉さんなのです。


 憧れちゃいます。


「そういえば、リア姉さんは、どうしてここで働いているんですか?」

「うふふ、気になるの?」

「はい」


 リア姉さんはちょっとミステリアスで、謎めかしいお姉さんです。

 たまに夜のお屋敷をお散歩していたり、行き止まりしかない場所で忽然と姿を消したりしてます。その後で、なぜかコウモリがバサバサバサしてますが、一体どうなってるんでしょう。


(もしかしてリア姉さんは普通の人間ではないんじゃ?)


 なんて思った事もありますけど、真相は分かりません。


 すると、リア姉さんが近くに置いてある鏡に気がつきました。


「あらあら、鏡にヒビが入ってるわ。一体誰がやったのかしらねぇ。危ないから片付けておかないと」


 リア姉さんがそう言った通り、屋敷にある鏡が割れています。


 姿を映せるような大きなものではなくて、飾りみたいなものです。

 小さくて、すぐに持ち運びができそうなサイズなので、廊下の壁に飾ってあったみたいです。


(けど、あれ?)


 うん、やっぱり見間違いじゃありません。


「どうかしたの? チヨ」

「いっ、いえ、何でもないですっ」


 そうです、忘れてました。


 リア姉さん、なぜか鏡には映らないんですよ。


 一体どういう事なんでしょうね。

 もっと仲良くなったら、いつか聞いてみたいです。


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