22 作戦失敗



 ちょっとは、お仕事出来るつもりだったんですけど、ご主人様のお食事の邪魔をしただけでなく、手当てまでつきあわせてしまうなんて。


 私成長作戦、失敗。

 あうぅ、だめだめです。


「あっ、あのぅ。ごっ、ご主人様っ、ごめんなさいっ!」

「お前は本当にそそっかしいメイドだな」

「あうう」


 こんなんじゃ、クビにされても文句を言えません。

 でもそうしたら、この世界でどうやって生きていけばいいんでしょう。


 頼る当てもないし、一人で生きていけるほどの能力もないです。


(ご主人様、怒ってるだろうな)


 何とかして、許してもらわないといけません。


 だけど、しょんぼりしている私の耳にご主人様の笑い声が聞こえてきました。


「くっくっくっ。だが、それでこそだ。わざわざ生き倒れていたのを拾ってきたかいがある」

「ふぇっ?」


 楽しそうな様子を見せるご主人様。訳が分かりません。

 私に迷惑をかけられるのが良いなんて。

 ご主人様って、ドエスにしか見えないのに、ひょっとしたドエムの方だったんでしょうか。


「こんな話を知っているか? 生き物は休まず働くと効率が落ちるらしい。疲労の蓄積から、集中力が欠如して、ミスを起こしやすいとの事だ」


 なるほど、ふむふむ。

 ご主人様はすごく物知りです。


「お前、最近働きすぎだろ。見に行くと、毎回仕事してるお前の姿を見るぞ」


 そういえば、最近ずっとお仕事中にご主人様に会ってますね。


 比例して、白昼夢を見る回数もマシマシですが。


 ご主人様は「だから」と続けます。


「俺の命令だ。駄メイドのチヨ、休め」

「ふぇっ?」


 クビにされるどころか、労わられるなんて。

 普段のご主人の姿からは想像できません。


(もしかして、そっくりさん? それか幻? 双子さん?)


 まぶたをゴシゴシ。


 なんて思ってたらご主人様がジト目。


「そっくりさんでも、幻でも双子ない。失礼なやつだな」

「ひぃっ、すみませんっ!」


 デコピンされました。


 顔に出てたみたいです。


「人には人のペースというものがあるんだ。根を詰めていては、できるものもできなくなる。俺にはお前を拾った責任があるからな、そうそう放り出したりはしない」

「ご主人様! ありがとうございますっ」


 あっ、これあれです。

 弱った人の急所を突くようなこれ。

 そういう作戦なんですね。


(良い人アピールで一気に心象アップ。ご主人様の小悪魔っ!)


 でもやっぱり嬉しいです。

 ご主人様、励ましありがとうございます。


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