21 トライ・トライ



 お掃除はちょっと失敗。

 でも、へこんでられませんっ。


 ご主人様の、お食事の時間がやってきました!

 次も頑張りますっ!

 私成長作戦、その二!

 トライです!


 給仕係の人は食堂に集合ですっ!


 という事で毎日のようにお皿を割りそうになってる私は「ドジっ子配膳係」の汚名を返上すべく、新たなる試みに挑戦中。


 さっそく、ご飯をご主人様のお部屋に持っていきます。


 扉をこんこん。


 ご主人さま、ご飯のお時間です!


「入れ」


 許可が下りた後、お部屋の中へゴー。


 カチャカチャ。


 お仕事しながら、私はぽろっと成長作戦について口にしてしまいます。


 すると、なぜだか、微妙な視線が……。


「それで、結果がそれなのか」


 ご飯のお席についたご主人様が視線を向けるのは、私が運ぶ金属製の頑丈なポット。


 何が言いたいのか分かりませんが、ここはいけいけどんどん。


 私はポットを置いて、胸をはります。

 

「落としても大丈夫な、頑丈な物を運ぶ事にしました!」


 するとご主人様、ばっさり。


「まず落とさないところから、なおせ」


 そ、それは、正論ですねっ。


(確かにそうですけどっ、そんなばっさり言わなくてもっ)


 ご主人様は呆れながら、お食事開始。

 お貴族様らしい優雅な仕草で、ご飯を口に運びますです。

 様になってるなー、なんて見てたらおっと手元が!


「あわわわっ」


 ガシャーン!


 落とした瞬間に飛び散った中身の液体が足について、とっても熱いです。


 物は壊れなかったけど、落として火傷してしまいました。


「あちちちっ! あつっ! あついですっ!」

「やっぱりやったか」


 ご主人様がやれやれと肩をすくめながら、私をひょいとかつぎあげます。

 行先は、救急箱のある手当てのお部屋。


「まったく問題が解決しとらんだろ。その事に気がついてないお前の様子が、もはや一周して愛らしいな」


 ご主人様に心配されて、運ばれるメイドさん、ここに誕生。


(ごっ、ごめんなさい~っ!)



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