13 モテモテご主人様
ご主人様の性格って、ほんと悪いですけど、メイドからの評判が良いみたいです。
それだけじゃなくて、周辺にある町の人達からも、慕われていますし、すごくモテますし、貴族のご令嬢さんからもモテているようです。
どれくらいと聞かれたら困りますが。
その日、私は屋敷の窓をふいていました。
でも、身長がお子様サイズなので、手が届かないです。
「ふぬぬぬぬ~」
頑張って伸ばして、伸ばして、ようやく、という有様ですね。
もちろん土台必須です。
それがなかったら、ぴょんぴょんしながら窓ふきする事に。
一度忘れてしまった時などは、ご主人様に目撃されて「間抜けな兎がいるぞ」って川買われてしまいました。
(お仕事大変なのに、ご主人様たまに邪魔してくるからなぁ)
でも、簡単なお掃除くらいなら誰かの手を借りずともできるようになりましたよ。
成長です。
掃除道具入れの場所も覚えましたし。
これなら、メイドとしてのさらなる飛躍が期待できますねっ。
なんて、考えながら窓をふきふきしていたら、背後をメイドさんが通りました。
ちょっと気分が悪そうです。
(大丈夫かな)
なんて思っていたら、ふらり。
倒れる事はありませんでしたけど、かなり危なそうです。
「だ、大丈夫ですかっ」
「あら、チヨ。頑張ってるわね。私は平気よ」
「でもふらふらしてましたし。万が一があったら」
このお屋敷広いですし、知らない所でばったり倒れていたと思うと、気が気じゃありません。
確かこの人のお仕事は、客間のお掃除だったかな。
「私が後はやっておきますので!休んで居て下さい!」
強引にお仕事をもらった私は、窓ふきを終えて、客間にゴーです。
訪れた客間は、とても広いです。
でも、大丈夫なはず。
成長した私にかかれば、お掃除くらいちょちょいのちょいですから。
なんて、言った傍から、トラブル発生!
「どっ、どうしてあんなところにっ、ペンが!?」
なぜかカーテンレールの上にペンが乗っています。
これは、背伸びしても、土台があっても届かない。
(一体誰がやんちゃしたんですかっ)
後から聞いたら、暇してたご主人様が投げたという話ですが、この時の私には分からないので、犯人の方に向けて、箪笥の角に小指をぶつける呪いはかけられませんでした。
(とにかく、お掃除のためにはあれもとらないと)
はたきでパタパタしながらなら届くかもしれませんけど、落としたら壊れちゃうかもしれませんからね。
(うーんどうしよう)
客間をぐるぐる歩きながら考えた私は。
これまでの知識と経験を総動員。
足場になる土台を用意して、片手でスカートをひろげながら、はたきをちょいちょい。
そうすると、ペンが落ちてきましたが。
「よっと、大成功です」
無事に広げたスカートの上にキャッチ。
うまくいきましたっ!
成長を感じられる一幕だったのではないでしょうかっ!
今日のお仕事は百点満点ですねっ。
「まだ、終わってないだろ」
なんて考えていたら、独り言がうっかり口にでていたらしいです。
しかもご主人様に目撃されてしまいました。
「気が早い。マイナス30点だ、最後まで気を抜かないのがプロというものだろ」
「あうう」
30点も原点なんて酷いです。
でも、最後まで気を抜かないっていうのは、確かに!
ですよね。
はぁ、反省しなくちゃです。
「まあ、今日はここは他のメイドが掃除するらしかったし、大方お前が何かお節介して変わってやったりしたんだろ。ほら」
「ふぇ」
しょんぼりしていたら、ご主人様が私のお口に何か突っ込んできました。
これは、ーー甘いです!。
飴玉ですね。
「ひゃひふぁほうほあいあう」
「食べながら喋るなマイナス20点」
しまった!やらかしました!
(今日は50点かぁ)
でも、ご主人様にご褒美(お仕置きではない方)をもらえるのはめったにない事ですから、ちょっと嬉しいです。
そんな風に一歩一歩メイド道を歩んでいる私でしたが、唐突におかしなイベントが発生しました。
こういうのって、何というか、色々親しくなったり、時間が経ったりした後に起きるものではないでしょうか?
私、ご主人様の事がいまいちよく分かりません。
とある日の夕方。
私は、お仕事の一つとして、お付きの使用人枠でご主人様に付き添い。
煌びやかな建物の中のパーティー会場にいました。
本日の、ご主人様は社交のお仕事してます。
堤防の出来具合がどうとか。最近のトレンドがどうとか。
鉱山の採掘の様子がなんとか、話をしています。
だけどご主人様、進士さん達と真面目な話をしていたのは最初だけ。
一息ついた途端に、大勢のご令嬢さん達に囲まれてしまっていますね。
キラキラしたお顔に誘われて、次々と女性たちがふらふら。
でも、何でか寄っていく人達って、みんな同じような感じの人達ばかりなんですよね。
「カーライル様っ。ひどいんですよぉ。この間、こんな事があってぇー」
「ちょっと今わたしが話してる番なのに。カーライル様っ。もっと、私の話を聞いてください」
「それより、私はカーライル様の事を知りたいですわ」
ちょっと、お調子者っぽいというか、軽い感じというか。
それでも、貴族で美容にお金をかけているからなのか、しっかり美人さんなお嬢様達ですけど。
楽しそうですねっ。
ご主人様はずっとずっと、そんなキラキラした素敵な人たちに囲まれ続けると思います。
はい。
「むー」
「チヨ、何をむくれている」
そんな風に会場の隅っこでほっぺを膨らませていたら、いつのまにかご主人様が近くに。
(いつ、瞬間移動したんですかっ!?)
まったく気が付きませんでしたよ。
「ひぁあっ! ご主人様、いつの間にっ!」
「退屈だ。話し相手をしろ。他の女共と話をするより、お前をからかっていた方が何倍も楽しい」
ご主人様はあんなにモテモテなのに、女の人達に囲まれていると、けっこう不機嫌。
とっても可愛い方達なのに、変なご主人様ですっ。
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