保健室

 やっと千津ちゃんが復活しまして、不登校にまつわるお話です。


 中学3年生の時、仲の良かった友人がぴたりと登校しなくなりました。もともと体が弱いとかで休みがちではあったのですが、いつもニコニコして穏やかな人で、私は彼女といるとホッとしました。

 担任の先生に彼女のことを聞いても、曖昧な返事しか返ってきません。今と違って、メールやlineで連絡をとることもできず。空っぽの席を見ながら、このままもう会えないのだろうかと思うと寂しかった。

 結局、彼女は最後の卒業式の日だけ、なんとか出席することができました。朝の教室で、声をかけたら何事も無かったように笑ってくれて、変わらない笑顔に泣いてしまったことを覚えています。


 いろんな背景があって、学校に行けなくなることもあるのだと思います。時には原因もきっかけも無いまま、ある日突然。

 親の立場になると、それってものすごい断絶を感じるんじゃないかと思います。こどもの将来の可能性が閉ざされたと悲観してしまったり。日本では、義務教育として認められているのが学校だけですから。

 私は個人的には、今の「学校」以外の選択肢があれば、もっと追い詰められずにすむのではないか? と考えてしまいます。夜間中学校とか大検とか、大人になってから学ぶ機会もありはしますけど、こどものうちに、学校以外の方法で学んだり、いろんな人と出会えたりする場があればいいのになぁって。

 例えばエジソンが小学校で先生を質問攻めにして怒られ、学校に行かずに母親から教育を受けた話は有名ですよね(エジソンの母親は元教師だったそうですが)。海外ではそうしたホームスクーリングが合法化され、学校教育に代わる教育として認められているところもあります。むしろ、より質の高い教育を求めてホームスクーリングを選択する人もいるそうです。こどもの興味に応じて、自分のペースで学べる方法としてメリットもあると思います。

 コロナ禍で学校にもオンライン授業が取り入れられ、不登校の子がオンラインで授業を受けたら出席日数としてカウントされたりもしているようです。それもアリじゃないかと思うし、そういうホームスクーリングに特化したオンラインスクールとかができて、義務教育として認められたらいいのになぁ、と思います。学校に行けなくても、自分のペースで学べる場があれば。新たな学びによって、可能性が広がっていくこともあるんじゃないかな……。


 しかしこういう話をすると、「それじゃ対人関係の経験が乏しくなる!」というご指摘があるだろうな、と思います。教師、先輩、同級生、後輩。学校ほどいろんな人間関係を経験できる場は無いでしょうね。

 でも、中にはその人間関係によって自分を破壊され、その後の対人関係が結びにくくなる人もいたりします。

 こどもの自殺率最多は夏休みが終わる9月1日、という話もありました。

 そこまで追い詰められる前に、学校じゃない第2,第3の選択肢を選べたなら……と考えてしまうわけです。

 例えば習い事とかボーイスカウト的な活動とか、自分の興味をもてるもので同年齢のこども達と出会える場はあるのではないかと思います。ホームスクーリングをしながら、そういう場にも行けそうなら参加してみる。

 中学校まで終われば、高校とか大学とかから「学校」に戻る手もあるのではないかと思います。高校になると単位制とか通信制とかもありますし。特に大学生くらいになると勉強の仕方も人間関係の付き合い方もだいぶ変わるというか、自分のペースでやりやすくなる気がするんですけどね。

 そう遠くない未来に、そんなオンラインスクールができないかな~。


 適応指導教室やフリースクール。あんまり馴染みが無い方もいるかもしれないのでちょこっと解説しますと。

 適応指導教室は、各市町村の教育委員会が運営している施設で、学校復帰支援を目的に学校以外の場所に設置されたものです。座学の授業だけでなく、教育相談活動、グループ活動、体験活動等もあります。

 個人的には、この名称もうちょっとどうにかならないのだろうか、と思ってしまいますが……。適応を指導って。なんか、登校できないのが悪いことみたいだ。

 実際の教室には、そんな指導的な雰囲気は皆無なのですが。

 こちらは行くと学校が出席扱いになります。学校と連携しての支援も行いますが、何が何でも学校に行け! というところでもありません。

 調べたら、H29時点で設置している自治体は約63%だそうです。そんなものなんだ……! 100%設置してほしい(´;ω;`)ウゥゥ


 フリースクールはNPO法人など民間が運営する施設です。必ずしも学校復帰を目的とせず、仲間づくりや社会との接点の場を目的にしているそうです。

 適応指導教室との違いは、公営か民営かというところで、こちらは有料になります。学校の出席扱いになるかどうかもフリースクールによって違うそうです。義務教育機関に関わらず、20歳くらいまで受け入れたりするようなので、そのへんは民間の強みだなぁと思います。通信制高校の卒業サポートをしてくれたりするところもあるようです。


 学校じゃなくても、どこかで、自分の居場所が見つけられたらいいですよね。

 次回は、そうやって模索している千津ちゃんのお話になる予定です。

 ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。

 

 


 

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