とんぼ玉

 友達が、好きな人の話をしたことがありました。

 彼は色白で背が高く、細縁の眼鏡をかけていました。ほっそりしたうなじを見て、友達は呟きました。

 「綺麗」

 彼は目立つ人ではありませんでしたが、よく見れば、睫毛の長い整った顔立ちをしていました。

 初めて、男の子を綺麗だと思いました。


 いつも隣にいた友達の、見知らぬ顔。深い眼差し。

 そんな瞬間を積み重ねて、人は大人になっていくのでしょうか。


 具体的な理由など無くて。

 垣間見た面影が、刻まれる。

 自分一人のもののはずだった心に、その人の面影が宿る。

 不思議なものだなぁと。


 夏の終わりの切なさ。

 夏休みが終わる、というだけではない切迫感。不意に、泣きたくなる。永遠に続くかのようだった季節の終わり。取り返しがつかない、二度と帰れない。

 今でも、夏はなんだか切ない季節です。


 「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」

 調べたら、2017年にアニメ映画になってたのですね。私が見たのは、1995年のものでしたが。

 あり得ない「もしも」。別れを告げぬまま、過ごした時間。二度と戻らない夏。ラストの花火の美しさ。なるほど、こう見えるのだなぁと……。


 あの頃感じた想いを、とんぼ玉に閉じ込めたくて。

 捕らえきれぬまま、長くなってしまったのですけれど。


 物語は折り返し地点。のはず。

 よろしければ、今後もお付き合い下さいませ。

 


 

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