9話 紙きれ

しつこく、勉強の話。


順位をつけるのは、悪いことではないと思うのですが。

運動会で、「順番をつけないために」かけっこのラストで一列に並ばせ同時に一等のテープを切る、という話には、違和感を感じますし。


ある塾では、特別合宿でホテルに泊まり込んで勉強するらしいのですが、試験の成績ごとに上階から部屋が割り振られるのだそうです。合宿中、何をするにも、成績順になるのだとか。

なんか、えげつないなぁ…と思ってしまう。

そりゃあ、勉強してもらって、難関校に合格してもらわないと評判が上がらない、経営が成り立たない、というのは分かりますが。

親も子も成績上げたくて塾行くんだから、と言われたら、それまでですが。


でも例えば、会社の社員旅行で、業績順にホテルの部屋を割り振ったりするか?

なんか、そういうことやると、歪む気がする。


勉強の成績って、物差しの一つでしかない。

それは全てじゃないし、それでその人の価値が決まるわけでもない。

でも、その物差しはとても強くて、時として、それしかないような錯覚に陥る。

というか、陥らせてる気がする。


社会に出たら、勉強の成績なんて関係ない。

確かに、頭のいい人はいる。

しかし面白いもので、いくら頭がキレて仕事ができても、「この人とは絶対一緒に仕事したくない」という人もいる。


なんなんでしょうね…。


高校3年生の時、突然、学年主任に呼び出されました。

身に覚えは無い。

不審に思いつつ個室に入ると、唐突に「K大を受験しろ」と。

私なりに、行きたい学部の資料を取り寄せて調べて、親にも相談した上で、志望校を決めていたにもかかわらず。

そういう話は一切聞かず、学年主任は「K市はいいぞ、盆地だからな。夏暑く、冬寒い」と笑いました。

私の故郷だって、盆地です。K市みたいに風光明媚な土地ではないけれど。

K大は、私が無理して上を目指せばもしかしたら夢ではないかも、くらいのレベルでした。当時の私に、そんな余裕はありませんでした。

そんなことも知らずに無責任なと、私は内心憤慨し、「志望校を変えるつもりはありません」と伝えました。

学年主任は笑って、それ以上何も言いませんでした。

今、振り返れば、学年主任の先生も、誰かに命じられただけだったのでしょう。本気の説得とも思えない理由を挙げて。


親に話すと、「本当にK大に行けば、あんたにかこつけて泊まりで観光に行けるわね」と笑っていました。

私の親はそんな人でしたが、これがK大だT大だって言う親だったら、どうなってたんだろうな。

その大学を目指すのが悪いわけじゃなくて。

人生の目標が「T大に行くこと」とかになるのが恐ろしい。

そこで、何かが見つかればいいけど。

ゴールは大学じゃなくて、就職じゃなくて、その先にあるのに。


「比べるなら、周りとじゃなくて」というのはよく聞く話だけど、子育てしてると嫌というほど身に沁みる。

これが、難しい…。

長くなるので、またいつか。


試験後の楽しみ。

試験が終わったら、コンビニスイーツを買って帰ったり、皆でカフェに行ったり。

ふわふわのかき氷。夢みたいなケーキバイキング。

受験前は、カツ丼食べに行ったな。

なかでも思い出深いのが、作中のケーキパフェ。値段もお手頃で、ボリュームがあって、幸せでした。

あのお店、まだあるのかなぁ…。

今も、みんな行ってるのかしら。


大学の講義で、ある先生が「僕は帰って野球観ながらビール飲むために生きてる。人間の生きる理由なんて、そんなものだよ」と言ってました。

有名な精神科医の先生でしたが。

そういうことなのかな、と思いました。

いろんなことがあるけれど、日々にささやかな幸せを織り込んで。

明日も、ぼちぼち生きていく。


カクヨムも、私にとってはそんな、ささやかな幸せです。

今日もお付き合い頂き、ありがとうございました。



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