8話 正解も解説も無い

長々、書いてしまったけれど。

伝わりにくいだろうなぁ…と、解説にならない解説を、試みる。


勉強するのは将来のため、と言われても、当時は将来が漠然としすぎて、モチベーションにならず。

忍耐力をつけるためのトレーニングなんだと自分に言い聞かせて、大嫌いな数学に取り組んでいました。


真は、頭がいいわけではない。

分からないから、分かるためにどうしたらいいか考え、工夫したり努力したりして、その結果分かるようになる、ということですが。

普通は、今日はこのへんでやめとこうと「ほどほど」で済むところが、彼の場合は済まないのだと思います。

一度ひっかかると、分かるまで気が済まない。計画を立てると、計画したところまで勉強が終わらないと落ち着かない。

その繰り返し。


私が、そうだったんだなぁと思います。

自分では、分かっていないと知っている。

周囲には、分からない。

志望校を伝えれば、もっと上を目指せと言われる。

こんなにギリギリなのに。

周囲の目に映る自分と、本当の自分が解離していく。


伝わるかなぁ…。


「自由に座って」と言われて困惑するのは、息子の四歳頃のエピソードから。

保育園の教室には机と椅子が並べられ、決められた席に座るのですが。

ある日のお楽しみ給食で、先生が「自由に座っていいよ」と言ったのだそうです。

息子はどうすればよいか分からず、いつもの席に座ろうとしたのですが、先にお友達に座られてしまいました。

パニックになり、しばらく泣いていたそうです。


息子は今はうまくやってるようですが、この「自由に」問題で、私自身はけっこう悩みました。

教室に居場所が無い、というのとは、またちょっと違う。

自由といっても、実際は自由ではありません。

このへんは、あのグループの定位置。

一番前だと、張り切ってると思われる。

数々の暗黙のルールの中で、自分の場所はどこなのか?

一番最初に座ってみたり、一番最後に座ってみたり。

そんな時期も、ありました。


人には分からない課題。

辿り着いた答は正解だったのか分からないし、解説も無い。

日常に潜む落とし穴。みんな普通に通りすぎていく中で、私だけ気付かずに嵌まる。みんなは怪訝そうにしている。笑って誤魔化す。普通に歩きだしてみせるけど、本当は、怖い。いつも、どこかに潜む落とし穴。

毎日、その繰り返し。


伝わるかなぁ…?


もう少し言ってしまえば、脳の仕組みなのです。

耳で聞くことが苦手で、目で見る方が分かる、とか。その逆とか。

目に見えないものは分からない、空気は読めない、とか。

注意し続けることが難しい、まんべんなく注意を向けることが難しい、とか。


ここでも、バランスなのです。

私たちが持つ、いろんな力のバランス。

みんな、得意なことと苦手なことがある。

中には、そのバランスが、すごく極端な人がいる。


大学生の時、友人に協力して、知能検査の被験者になったことがあります。

結果として描き出された能力のプロフィール。

見事に、バラバラでした。

高い山と低い谷。


そこに現れてくるのは、一見分からないその人の生きづらさであり、これまでの努力だと思うのです。

谷を補う努力。

自分は何が苦手なのか。どうすれば出来るようになるのか。

そうやって辿り着いたやり方がある。生き方がある。


検査や診断というのは、生きていくための手掛かりだと思うのです。

排除するためのものではない。

生きやすくなるための、手掛かり。

一緒に生きていくための、手掛かり。

…そう思いたい。


いいのです、どんなプロフィールでも。

完全に平坦な人はいません。平坦を目指さなければならない訳でもない。

それぞれのバランスがあり、それぞれの生き方がある。

人生、山あり谷あり。

遥かな山も険しい谷も、ひとつひとつを楽しんで。

一緒に生きていけたら、それでいい。


だから許してくれ、ということではなくて。

努力し続ける。だけど。

そんな人もいるんだと、知ってほしい。

分かってくれとは言わない。せめて、知ってほしい。


伝わるかなぁ…。


読み返すと、本当に地味な物語です。

意表をつく設定は無いし、登場人物に華は無い。誰もが知っているありふれた日常。

あくまで、片隅の物語。


それなのに、書くのはすごく、パワーが要ります。まだ序盤なのに、書き続けられるんだろうかと思う。

それなのに、こんなものまで立ち上げている。

書いても書ききれない、拙いけど伝えたい、想い。


そんな物語を読んで下さっただけでなく、こんな呟きにまで付き合って下さった、あなた。


本当に、ありがとうございます。


私は、この物語の先にあるものが、見たいのです。

願わくば、書き続けられますように。









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