サロメ

黒猫亭

サロメ

サロメ サロメ

嗚呼、私の愛しい人よ


この首を捧げ

この血潮が美酒に変わるなら

どれほど喜ばしい事か!!!


その細く

象牙の様に滑らかな指で

そっと抱いてくれるのが

どれだけの喜びか!!!


私の肉は お前の為に

清水の様な冷たさへと変わろう


まるで磨かれた水晶の様な滑らかさを

お前の指に与えよう


私の血潮は お前の為に

この世の物と思えぬ程の

美酒へと変わろう


まるで果てぬ楽園の様な味わいと

その渇いた喉へ永遠の潤いを与えよう


サロメ サロメ

嗚呼、私の愛しい人よ


その黒曜石の様に

煌めく瞳も


まるで上質なシルクの様に

柔らかく艶やかな髪の毛も


その黒曜石を縁取る

長く密な睫毛も


熟れた果実の様に

甘く色付き瑞々しい唇も


その象牙の様に滑らかで

大理石の様に白い肌も


まるで若木の様に

靭やかで若さ漲り

澄み渡る様に煌めく四肢も


余す所なく

お前の喜びが駆け巡るのなら

私の首を与えよう


サロメ サロメ

嗚呼、私の愛しい人



ヨカナーンよ

私の頽れた太陽よ


腐しても尚

私に愛される太陽よ


お前の首は

なんと美しい事か!!!


この滑らかな指触りと

骨の髄に響き

火照る肌を鎮める

清水の様な冷たさよ!!


繊細な陰影を写す

その伏せられた瞼は

まるで寝静まった月の様な儚さ!!


二度と音を奏でぬ唇は

深海に眠る神秘で彩られ

微かに開き魅惑する貝の如く

真珠に似た歯を覗かせる!!


ヨカナーンよ

私の頽れた太陽よ


死して尚

私の心を照らす太陽よ


お前の滴る雫は

なんと甘美な事か!!!


銀の皿に広がる血は

まるで紅玉の輝き


馨しい芳香は

蜜に呼ばれる蝶の様に

私を惹き付ける


滴り落ちる血潮は

極上のワインより甘く甘く

私の喉を滑り落ち潤す

果てぬ楽園へ続く

甘美な雫


嗚呼、ヨカナーンよ

この手に お前を抱ける

最上の喜びよ


嗚呼、サロメ

お前の その手に抱かれる

至高の喜びよ


嗚呼、ヨカナーンよ

私の頽れた太陽よ

明ける事を知らぬ空になった私は

お前の血潮に触れ

人の身を辞めて

永劫、渇きに苦しもう

永劫、お前だけを愛そう


嗚呼、サロメ

夜を宿した私の愛しい人よ

明ける事を忘れた 憐れで

何よりも美しく浅ましく

人の身を辞め

血を糧とする その身を

私の血潮で

永劫、癒そう

永劫、お前だけを愛し

永劫、お前を離さぬ呪いを掛けよう


嗚呼、ヨカナーンよ

嗚呼、サロメよ

死して尚、この身を縛り

揺るぎなく至高と成り

夜を往く者よ


果てぬ愛を

お前に

    

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サロメ 黒猫亭 @kuronekotonocturne

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