第12話 春の夜
絢と一樹はお店を出る。
ごちそうさまでした~
店の扉を開けて2人は夜の街に出た。
「上着着な。おれ、たばこ吸ってるから。」
絢は、カバンと薄手のトレンチコートを持っている。
絢は今日、肩がシースルーになってる黒の半袖に、
白のスキニーパンツのモノトーンでキメている。
前もって、前日に着ていく服を決めていたが、
実際着てみたらなんだかパッとしなくて、
家を出る遅刻ギリギリまで、家でファッションショーを開催していた。笑
上着を着たかったが、手にはカバンを持っている。
あっ…。一樹さんに持ってもらおう。
絢は、スッと考え付き、
「このかばん持って~」
と甘えた声でお願いをする。
その勢いのまま、一樹の肩にカバンの持ち手を掛ける。
ん。
何も抵抗せず、持ってくれた。
めちゃくちゃ嬉しい…
そのあと、一樹さんが吸っていたたばこの銘柄が変わったことに前から気づいていて、チャンスだと思って絢は話しかける。
「そいえば、たばこ変えましたよね?」
「俺、前は何吸ってたか覚えてるか?」
「えーっと、○○っ!」
あ、間違えた。
絢は、完全に失態を犯した。
自分で完全に、違うことを言ったのは、発言してすぐ気づいた。
が、後の祭りである。
「好きな男の銘柄ぐらいおぼえておけよ~」
絢は、そう言われたので、
「えー、もう好き前提ですか?笑」
と軽く話題を逸らした。
「だって、好きだろ?」
「いや、まあ、好きですけど…」
なんて自信のある発言なんだ…
絢は、一樹の自信満々の発言に、
ちょっと一樹らしさを感じた。
「じゃあ、ハグしてくれます?」
絢は大胆に一樹に問いかける。
「いいよ、たばこ吸い終わってから。」
え、まじで…?
絢は驚きを隠しきれなかった。
言ってみたは良いものの、本当にしてくれるなんて…
でも本当かな…
私をからかっているだけ…?
一樹のたばこを吸うスピードが少し、
いや、かなり早まったのを絢の胸の鼓動は
いつになく、早さを増していた。
「ん。いこっか。」
そう言って、一樹は絢に右手を差し出した。
あ、手繋いでくれるの…?
まじか…
絢は、戸惑いつつもすぐ左手を出し、一樹と手を繋いだ。
一樹の手はとても温かかった。
ハグしてくれないとかどうこうより、手繋ご?と差し出してきたことに
嬉しさと戸惑いがあった。
「俺、最近、食器とか洗ってるからめっちゃ手ガサガサだよ。」
そういえば、一樹と言ったら、
手がつるつるでとってもきれいな指をしている。
今にもキスしたくなりそうな潤った手。
というか、一樹が手がガサガサでも別に気にしない。
手が繋げるだけでも幸せだから…
私、ちゃんと保湿ケアしといてよかった…
この時ばかりは、本当に思った。
少し無言のまま、駅の方へ肩を並べて歩いていく。
駅までの道で、何か話をしたが、緊張と幸せといろんな感情で
あまり覚えていない。
というか、地に足がついてないんじゃないかと思うくらい、
ふわふわしていた。
…
駅が近づいてきた。
大通りを通らず、
敢えてなのか、
暗く、あまり人通りがない道を歩いていた。
「もう一軒行くか?」
一樹が2件目を誘ってきた。
この今の雰囲気は最高潮なので、断る理由がない。
「いきましょ~」
絢は、答える。
「その前に、俺トイレ行きたいわ。」
絢もその時とても行きたかったので、
「あー、私も行きたいですー。」
と話した。
横断歩道を渡り、
二次会でよく使う居酒屋が入っているビルに
二人は入っていく…
「いつものお店やってるかなー」
絢と一樹は、お店の前で立ち止まった。
お店の前に看板がある。
看板を確認すると…
…。
「あ、今日は、もう閉店ですって。」
「あーほんとだー」
「最近この辺店閉めるの早いね。」
絢は内心、めっっちゃくっちゃショックだった。
このまま2件目に行って、
もっと酔ったら何かいいことありそうな気がして。
でもその夢は儚く散った。
「このビルの2階にトイレあるよなー。」
そう言って、絢の手を握りながら、
一樹は階段を探し始める。
あ、ここだ。
階段を見つけ、二人は2階へ上がる。
2階には、キャバクラの店舗がある。
「あー、ここのキャバクラも店閉めてるね。」
一樹はそう言って、トイレを探し始める。
絢は、一樹と手を繋いだまま歩く。
「あ、ここトイレっぽいですよ。」
「え、どこどこ?」
「うしろ。」
「あったね。」
と言って、二人はそれぞれ分かれた…
【次回予告】
この後、絢は今までのことをはるかに超える展開に遭遇。
おたのしみに。
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