第3話 二次会へ

一樹たちと二次会に行くまでの間の話。



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今日は納会。


仕事納めだ。



時刻は10時。

納会もおしまいだ。



みんなー、帰るぞー。


トップリーダーの一言で納会は締めくくられた。



今夜は、風が吹いてて寒いな…



絢たちは、会社を出て駅に向かって歩いていた。




「おーい、絢。カラオケ行くぞー」


集団の後ろの方にいる完全に酔っぱらった職場の方たちが声をかけてくる。




「はーい、わかりましたぁ。」


絢は、健気に返事をする。



内心は

「またカラオケかぁ。

 この集団とカラオケに行ったら、終電で帰れるのかな…

 結構みんな酔ってるしちょっとめんどそう…。」


こんなことを思っていた。




絢は、家の最寄駅が近いチームメンバーのアキコさんと一緒に歩いている。




「二次会行くの?」



アキコさんは、絢に問う。




「二次会カラオケらしいですね。アキコさんいきます?」



絢とアキコさんは毎回二次会に行くメンバーだ。




また遠くから声が聞こえる。



「一樹部長はどうしたー どこにいるんだ?」 



「えー、知りませんよ?

またタバコでも吸っているんじゃないんですか?」




みんなは笑ってそう答える。


そう言われてみれば…

さっきまで隣にいた一樹の姿が見えない。


ほかにも、一樹と仲のいい隣のチームの部長もいない。






絢は気になって、スマホを確認する。




…。



「?」




一樹からメッセージが入っている。



「え?はてなってなんだ?」


絢は、一樹からの意味深な連絡にちょっと戸惑う。


「一樹も顔には出ていないけど、もしかして結構酔ってる…?」



「二次会行かないのかな?」




「まあいっか。返信するの面倒だし、電話しちゃえ。」


考えだすと悩んでしまって、返信したくてもできない。

少々一樹のことが心配だったのですぐ電話することにした。




…。ルルルル…





「もしもしー一樹さんー?」



「おい、絢、近くに誰もいないだろうな?

 俺と電話しているなんてバレたらトップリーダーに怒られるぜ?」




その心配はなかった。



近くには、トップリーダーもいないし、

アキコさんも酔っていて、違う人と話をしている。


「その心配は大丈夫ですよ。みんな遠くにいますし。」


「おぉ、そっか。」


「…。」



「…。絢さ、この後飲みに行かないか?」







それは、二次会のお誘いだった。


本当は、カラオケなんかよりも、一樹と二次会に行きたい。

と思っていた。



思っていたことが、現実に起こった…


絢は言葉にならないぐらい、とっても嬉しかった。




「え!いきます!」



それはもちろん行くでしょ。

一樹に二次会誘われて断る理由なんてない。



一樹から誘ってくれるなんて…


この間話したときは、

「俺、部長になったら、部下と飲みに行かないって決めてるんだよね。

 派閥とか、ひいきとかって言われるの御免だわ。」


そんな話をしたばかりの出来事だったので、今回一樹から誘ってくれたのは、

もしかしたら数少ないチャンスなのかも。


そう思った。



しかも、一樹と仲の良い隣の部署の部長と、仲間を連れてくるとのこと。



絶対に楽しい二次会。



「じゃあな、絢。まずその集団を巻いてこい。

 コンビニ行くとか言って。」



「わかりました。」



「うまく巻けたら連絡しますね。」



「うん、わかった。」



…。




一樹との電話は終わった。




ところで…

この集団を巻くって…  どうしようかな…


私がコンビニに行くなんて言ったら

みんな待っていそうだしなぁ…




…。





そうだ、駅前のTSUTAYAにいけばいいじゃん!


絢は、名案をひらめいたかのような表情をし、

弾むステップで歩き出した。





…。




だんだんTSUTAYAに近づいてきた。



「お店に入ったら、一樹に電話しよっと。」




そう思っていた時、一樹からの着信だ。



ヴーヴー…。






絢は、その時思った。


「着信があと30秒遅かったらなあ…」


「まあいっか、とりあえず電話に出よう。」




「…。もしもし?」




「おー絢かあ~」


「ちょっ…ちょっと待ってください

 30秒後にもっかい電話します!」



「はい。」



案外素直に電話を切ってくれた。

そしてさっきより1ランクも2ランクも上にテンションが上がっている。






電話を切ってすぐ、絢たちはTSUTAYAの前に着いた。



「私は、今日DVDを借りて帰るのでー。」


「お疲れ様でしたー。」



「あ、TSUTAYAに寄るんだね~遅い時間なのにやってるんだねぇ。お疲れ様ー。」


そう言って、この集団を難なく捲ることができた。



絢はほっとした。

心の中では完全にガッツポーズをしていたに違いない。




階段を上り、店内に入る。


「そうだ、一樹に電話しなくちゃ。」


「一樹を待っている間、普通にDVDを探して待っていよう。

 見たかった映画があるんだよね。」


と思いながら、

一樹に電話を掛けなおした。



ルルルルルル…



「もしもし~絢ぁ~」


一次会の後半では、一樹は絢とずっとおしゃべりをしていた。


時間にしては、大体1時間程度だろうか。




絢は酔った一樹の声を聴いて、クスっと笑い、返事を返した。


「もしもし、一樹部長〜

 TSUTAYAに着きましたよー。」



「わかったぁ。」


「こっちは、おじさん三人でいくからなー」


「絢、おじさん好きだろー?」




「まあ、好きですけど笑」




「変態トークもたくさんするからなーw」





「ハイハイ、わかりました。」




…。


この後も、一樹との会話は続いたが、

全部の時間を下ネタトークで持っていかれたので、

ここは、読者のあなたの想像に任せるとする。





電話の時間は、およそ4分間。



話が終わり、電話を切って待つことになった。





「あ、そういえば。

 さっき、トイレに行ったときに、口紅の色が落ちてるって思たんだわ。

 塗りなおそう。」




絢はカバンから、おもむろに口紅を取り出し塗りなおした。




今日は、大人びいたワインレッドカラーだ。



「一樹たち、どのくらいで来るのかな…」



「まず最初にあったとき、どんな話をするのかな…」

「何話そう…」

いろんなことを考えながら、一樹が到着するのを待っていた。 









数分後。



「あーいたぁ」




一樹の声だ。



一樹の他に2人の姿が見える。

みんな私に手を振ってくれている。

私もみんなに手を振り返す。



やっと来たー。


絢は、嬉しげな声で一樹たちと合流した。




一樹以外の二人は階段の下で待っているが、

一樹は、階段を上ってきてくれた。


トントントン…


一樹が一歩ずつ、階段を上ってくる姿が見える。

絢も慌てて階段を降りる。



絢が階段を降りだすと、

一樹が階段の中腹で止まった。





一樹が何も言わず、絢の肩に手を回す。


絢もそれに答えるように、少し照れながら一樹の側に近寄る。



「もーう、待ってたんだからぁ」

絢が一樹に甘えてみる。



すると一樹が、

「ちゅーするか?」



冗談交じりに言ってくる。



まさかね。

一樹がキスなんてしてくれるわけないと思い、

半分冗談で、絢も一樹のノリに合わせるように、

「ちゅーするー」


と言いながら、一樹のくちびるに顔を近づけた。




…。



思った通り、寸止めで止められてしまう。


「ちゅーはだーめ。」

一樹からキスの許可が下りなかった。

まあ、当然の結果だと絢は我に返る。



「うっ…ですよね…わかっていながらもつらい…」

「あと3センチでキスできたのに…」


ちょっとのことだったが、

寸止めのキスは精神的にも欲求的にもかなりのダメージを負うものだ。




でも絢は一樹の近くをずっとキープしている。






階段を降り、一樹たちメンバーと合流する。




「外さっむ。」



そういいながら、

二次会の会場へと歩き出した。


二次会の会場は、一樹チョイス。

お店選びもしてくれて、なんだか楽しそう。



足取りは早歩きではなく、完全に走っている。

普段仕事の時は、ゆっくりスローペース歩くのに、

走っている。



これにはみんな笑ってしまった。






みんなで楽し気に歩いているうちに、

一樹が選んでくれた、お店に到着した。



カフェメインのアルコール類が飲める小洒落た お店だ。



なんだか雰囲気がいい。



一樹とは、一回でいいから、バーに行ってみたいんだよなぁ…






そんなことを考えながら、ラストオーダーまで30分の二次会が始まった。


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