71.黄幻竜討伐

 さて、夜は若様の依頼だが、これはなんの断りもなく、ごく自然に、黄玉幻竜装備を作れと言ってきた。

 まあ、持っている生産道具から考えてそれが妥当なんだけどさ、今日持ち込まれたのは、片手剣と棍棒がひとつずつか。

 文句は若様に言うとして、さくっと依頼の分を納めてしまおう。


 ユニーク装備を作り始めて三時間後、無事にユニーク装備は完成した。

 やっぱり、藍玉幻竜装備は流線型を主にした流れるような流線型のデザインに対し、黄玉幻竜装備はどこかゴツゴツした装備なんだよな。

 そこら辺は個人の好みが分かれるところだろうけど、俺は藍玉幻竜装備のほうが好きである。


 さて、今日の分の依頼はこれで完了。

 ギルドの共有倉庫にある納品ボックスに放り込めば、依頼は完了だ、


 これからの予定だが、いくつかやりたいことがある。


 ひとつ目が竜魂のインゴットを大量生産することだろう。

 幸い、竜の秘宝系のアイテムは、品質確定Aでドロップする。

 なので、品質については困らなかったのだが、それでも大量に買い付ければ、なにかがあると調べ始めるプレイヤーも出てきたらしい。

 まあ、仲間たちの装備を作るのに十分すぎる量の秘宝は購入済みなんだけど。


 次は、『竜命脈の結晶』を使ったアイテム作り。

 さすがにこっちは、まだできる気がいないのでおいておく。


 三つ目は、竜魂のインゴットで装備を調えて、目的のモンスターを倒しに行くというものだ。

 俺の想像が正しければ、竜魂装備は特定のモンスター達を倒すことでその真価を発揮できるはず。

 その目的を果たすためにも竜魂装備を急いで作る必要があるのだが……。


「さすがに、いまからじゃ時間が足りないよなぁ」


 現在時刻は午後九時を回ったところ。

 普段は十時くらいには寝ているので、あと一時間くらいが活動時間だ。

 さて、半端な時間どうしようかな。


 半端に手空きとなった時間にどうしようか悩んでいると、フォレスト先輩から連絡が入った。

 なんでも、サイ姉さんとダンに助っ人を頼んで、黄幻竜を倒しに行く予定らしい。

 それに俺も参加しないかと言うことだった。


「やることもないし、ちょうどいいか」


 すぐに参加の返事をすると、詳しい集合場所の場所が送られてきた。

 アイテム類はひと揃え準備してあるので気にしなくてもいい、とのことだが、念のため回復薬は持って行っておこう。


 集合場所に着くと、ほかのメンバーは全員そろっており、俺を待っていたようだった。


「すみません、お待たせしちゃって」

「いや、気にするな。いきなり誘ったのはこちらだしな」

「そうだねー。ところで、エイト君、今日って何時くらいまで狩りできるの?」

「そうですね……普段は十時には寝てますけど、十一時くらいまでならなんとか」

「わかった。それでは、その予定で、黄幻竜の討伐ツアーと行こうじゃないか!」


 全員が「オー!」と気合いを入れている。

 あれ、でも、『リーブズメモリーズ』って黄幻竜やったことなかったっけ?


「フォレスト先輩、黄幻竜って倒してましたよね?」

「ああ、倒しているな。今日は、新規加入してくれるというサイ姉さんと一時加入してくれるダンの歓迎会だ」


 なるほどな。

 そういえば、ダンも橙妖精装備は持ってても黄玉幻竜装備は持っていなかったっけ。

 サイ姉さんは……そもそも妖精装備シリーズはどれも持ていなさそう。

 一人分の素材なら持ってるから、一式作って渡すことはできるけど、そういう問題でもないんだよね。

 難しいところだ。


「そういえば、私たちの装備を黄玉幻竜の装備一式にしてくれるのはどうなっているんだね?」

「うーん、仕事の依頼量的に、来週頭くらいから開始でどうです?」

「ふむ、それならばいいか。あまり無理も言えないからな」

「よろしくお願いします。その代わり、先輩たちにもプレゼントを用意しますんで」


 俺の口からプレゼントという単語が出た途端、フォレスト先輩の眉毛が跳ね上がった。


「ふむ、それは壮行会のときにソードに渡していたあれか?」

「あれの完成版ですね。あのときはまだ、素材が未完成でしたので」

「ほう、それは楽しみにしているよ」

「ええ、楽しみに待っていてください」


 そうして始まった黄幻竜狩り。

 なれていないサイ姉さんが、時々ミスをするが全員でリカバーして体制を整える。

 前回戦ったとき同様、HPが高いことくらいしか能がないボスはあっけなく倒されていった。


「ふわー。フォレストちゃんたちだけじゃなく、エイト君も強いのねー」

「なれてる相手には強いだけですよ。さあ、黄幻竜を解体して、次に移りますよ」

「はーい。でも、ボス周回ができるってことは、結構上位の腕前を持ってるってことよね、皆」

「サイレントの姉御、それは内緒ってやつですぜ。本人たちの自覚がいまいち薄いんで、そこは今後矯正させますから」

「了解です。ダンさんよろしくお願いします」


 その後も次々と黄幻竜を撃破、十分な素材を持ち帰ることができた。

 この素材を使って、サイ姉さんの黄玉幻竜装備を作るのだ。

 橙妖精装備がないのは、手持ちの素材から俺が作ると言うことで話が付いている。


『リーブズメモリーズ』の今後だが、しばらくは、サイ姉さんの妖精装備を調える方針で活動するらしい。

 妖精装備さえあれば、あとはお金を払えばなんとかできるだろう、と言うのがフォレスト先輩の談。

 実際、妖精装備の素材は足りてないけど、妖精装備を幻竜装備にグレードアップするための素材は十分に用意してあるから間違いじゃない。

 なお、その際の費用は、余った妖精素材を売却することで手に入る資金を充てると言うことだった。


 ともかく、『リーブズメモリーズ』に新しい助っ人がふたり加わることとなった。

 これで、人員不足から戦闘系コンテンツに挑めなくなる機会は減るだろう。

 ……俺が参加できないことは多いんだけどさ。

 若様に頼んで、『ヘファイストス』の戦闘班でヒマしている人を紹介してもらえないか頼んでみるか?

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