仮面鍛冶士は今日も装備を作る ～Braves Beat～

57.青妖精装備完成

「いやー、仮面の。さすがだねぇ！　全部品質S+でそろえてくるなんてね」

　装備を発注された翌日、その日は勉強会も休んで装備作製の時間に充てた。

「その反応からすると、他のメンバーは違ったのか？」

「他の皆は大体Sがいくつかあったかなー？　さすがにAランクまで落ちるメンバーはいなかったけどね」

「まあ、そうだろうな。でも、あの素材品質でもS+に届かなかったのか？」

『ヘファイストス』の上位生産者なら、あの素材品質ならS+で安定すると思ってたんだけど。

「話を聞く限り、なれない素材って言うのが大きかったみたいだねん。皆、最初のほうで作ったのがSに落ちたみたいだよ」

「なるほどな。やっぱり、初めて扱う素材は緊張するか」

「緊張って言うか、勝手がわからなくて安定しないって話だけどね。その辺、仮面のはどうしてるのさ？」

　俺か、俺の場合だと……。

「素材の属性から大体当たりをつけて、部屋の環境を整えるな。俺の場合、精霊を生産特化にしているから、どんな環境でも再現できるから」

「あれ、仮面のの精霊ってサラマンダーじゃなかったっけ？　水や氷の環境も再現できるの？」

「再現できるぞ。スキル取得のためのポイントが増えるだけで、生産スキルの場合は覚える事が可能だ。戦闘スキルは知らないけど」

「へぇ、そうだったんだねぇ。でもそうなると、仮面のの精霊って戦闘スキルはほとんど覚えてないんじゃない？」

「一切覚えてないな。戦闘に連れて行くつもりがないからいいんだよ」

　これくらい割り切らないと生産特化なんて言えないからな。

　それに、半端に戦闘スキルを覚えたところで、上位の狩り場じゃ精霊に頼れないのはいっしょだし。

「なるほどねぇ。この情報、他のメンバーに伝えても？」

「かまわないけど、知ってるんじゃないか？」

「どうだろうね？　知らないメンバーも多そうだよ。スキルリセットしてでも生産特化の精霊にするメンバーも増えそう」

「そんなものかな」

「そんなものだって」

　若様がそう言うんだったら、そういうものなんだろう。

　俺の関与する範囲の話ではないし。

「それにしても、青妖精装備、美しいねぇ」

「だな。水属性らしいと言えばそれまでだけど、流線型のデザインがきれいだ」

　ユニーク装備は生産者側で一切デザインをいじれないからよくわかるけど、運営の用意してきたデザインがとても秀逸である。

　こうして眺めているだけでも、その華麗さは同じ妖精系装備の中でも一番と言えるだろう。

「……惜しむらくは、この装備を僕が装備して戦わなくちゃいけないってことだよねぇ」

「若様に似合わないってことはないと思うぞ？」

「いやぁ、僕にはこんなキラキラした装備は似合わないって。もっとゴツゴツした装備のほうが似合うよっと」

「そうかねぇ」

「そうさ」

　その辺りは個人の意識の差もあるし、あまり気にしないでおこう。

　それにしても、本当にきれいな装備品だな。

「ところで若様。かなりの数の素材が余ったんだが、それはどうすればいいんだ？　ギルド倉庫にでも戻せばいいのか？」

「ああ、それなんだけど、自分で作りたい装備があったら使ってしまっても問題ないってことで話がついてるよ。その代わり、さっき渡した最低金額のお金をギルド資金に戻しておいてちょうだいな」

「ずいぶん太っ腹だが、いいのか？」

「かまわないよ。一日でかなりの数の装備を作ってもらったんだ。その見返りだよん。特に、仮面のも含めた学生陣にはきつかったっしょ」

「……まあ、普段よりも睡眠時間を削ったのは事実だな」

　昨日は、普段よりも二時間ほど睡眠時間を削って生産をしてた。

　もっとも、夜更かしをしていたのではなく、朝早く起きて生産をしていたのだが。

「そういうわけだから、心置きなく使ってちょうだいな。余らせたようならギルド倉庫に置いておいてちょうだい」

「わかった。それじゃあ、遠慮せずに使わせてもらおう」

　許可も出たし、いろいろ作らせてもらおうか。

　まずは自分の青妖精装備を一式そろえるところから始めて、次は……。

「さて、そろそろ集合時間が近くなってきたからおいとまさせてもらうよ。これから藍幻竜に行ってこなくちゃ」

「おう、がんばってな、若様」

「あいよー。朗報を期待しててくれたまえ。そんじゃねー」

　若様を見送って、俺は自分の装備を作るために工房へとこもることにする。

　まず作るのは自分の武器である刀だ。

　水属性であるので、室温は常温より低めの温度に調整してもらう。

　昨日もこの温度帯で最高品質の装備が作れたし、問題ないだろう。

「さて、それじゃ、始めますか」

　素材を炉に放り込み熱してインゴットを作る過程から始め、次々に作業を進めていく。

　そして、一時間ほど作業を続けて刀が完成した。

　品質はもちろんS+だ。

「うん、上出来。それにしても、他の装備にもまして本当にきれいだな……」

　刀は半透明な水色で、時々波打つように色を変える。

　それだけでも十分にきれいなのに、光を当てるとまた色を変えるのでこれがまた美しい。

　翠玉幻竜の刀も比べてみるが、こちらは単色で色の変化はないため、観賞用としては見劣りしてしまう。

　もちろん、性能では幻竜装備のほうが上だけど。

「若様たちが討伐に成功すれば藍玉幻竜装備が作れるのかな？　これは楽しみだ」

　戦闘班の健闘を祈りつつも晩ご飯の時間なのでいったんログアウトする。

　若様から藍幻竜の討伐に成功したというメッセージが届いたのは、夜遅く、俺が寝る直前の時間になってからのことだった。

　なお、最速討伐も達成できたらしい。

　おめでとう、戦闘班。