56.青妖精素材の入手
ボウガンの試験から数日がたち、ついに青妖精と藍幻竜が実装された。
それぞれ名前が、『青妖精ウォーターエルフ』と『藍幻竜ヴァッサー』らしい。
実装初日ということもあって、攻略方面は大いに賑わいを見せているのだが、今回『リーブズメモリーズ』はまだ戦闘に行っていない。
ブルー先輩の予想通り、ブレンのやつが勉強漬けでダウンしているためだ。
フォレスト先輩から提案があったあと、毎日放課後ゲーム同好会の部室で勉強会をやっているのだが、それでもブレンの勉強嫌いはなかなか直ってくれないようだ。
俺とレイはそれぞれマイペースに勉強をしているので、こちらはいい感じに進んでいるのだが。
それはさておき、今、俺の工房には珍しいお客たちがそろっている。
青妖精を狩ってきたらしい若様に、『ヘファイストス』所属の生産職人が五名ほどだ。
「やっほー、仮面の。ちょっといいかい?」
「まあ、かまわないけどさ。急ぎの案件か、若様」
「超特急の案件だよん。青妖精をとりあえず十匹ほど狩ってきたから、それを皆で分けて戦闘班の装備を作ってほしいんだよ。できれば明日までに」
「明日までって……生産道具はどうするんだ?」
「とりあえず仮面のの分についてはフラスコに頼んであるよん。素材を持ってきてくれれば最優先で作ってくれるってさ」
どうやら、本当に最優先案件のようだな。
しかし、どうしてそこまで急ぐのやら。
「詳しい話は解体しながら聞かせてもらおうか。ええと、解体するのは誰にする?」
「解体は仮面のに任せるってことで話がついてるぜ。仮面のが解体スキルのレベルが一番高いからね」
「わかった。それじゃあ、パーティに誘うから順次入ってくれ」
今来ているメンバーをパーティに誘い、解体時に素材が行き届くようにする。
全員がパーティに参加したことを確認して解体部屋に移動し、作業台に青妖精の死体を出してもらう。
青妖精も他の妖精系と同じく、クリスタル状の物質に変わっていた。
「よろしくたのむぜい、仮面の。作ってもらいたい装備のリストと、誰にどの装備を頼むかは解体作業中にメールを送らせてもらうよん」
「わかった。それじゃあ、解体を始めさせてもらう」
青妖精は水属性らしいので、アクアマリンの解体ナイフを取り出して解体を行う。
特に慎重にやる必要もないので、サクサクと解体を進めさせてもらった。
「それで、若様。なんで今回の依頼が最優先案件なんだ?」
「できれば、『ヘファイストス』が藍幻竜の最初の討伐者になろうと思ってね。どのギルドやパーティでも、青妖精を周回して素材を集め、藍幻竜に挑むってなったら最速でも明日だろう? ならいけるんじゃないかってねー」
なるほど、わからないでもない。
でも、その理論には穴があるぞ。
「確かに、最速でも明日だろうけど、多分ガチ勢だと明日は明日でも明日の未明とか明日の朝だぞ?」
「その程度の遅れはなんとかするさね。その分、高品質な装備を期待しているよー」
若様の言葉に、解体室に集まった全員が当然とばかりに頷いている。
実際、解体で出ている素材の品質は最高品質のものがほとんどなのだから、装備品にしたときの品質だって一級品になるだろう。
まして、ここに集まっているのは、うちのギルドでも上位の生産者ばかりである。
……ぶっちゃけ、各自に割り振られているはずの依頼はどうした? と聞きたくなるのだが、その辺は若様が事前にコントロールしていたのだろう。
俺も昨日今日は手が空いてたし。
「……さて、作ってもらいたい装備のリストは送ったよん。作れそうにないものがあったら、今のうちに教えてちょうだいな」
「すまないけど、俺は解体で忙しいから他の皆に確認は任せた」
全員、各種コア素材も含めて全種の素材が入手できているはずだから、生産可能品のリストは一通り表示されているはずだ。
それと若様からの発注内容を照らし合わせて、作れないものを確認するのでさほど問題は出ないはず。
それに、うちの戦闘部隊はそこまで奇抜な武器は使わないので、作れない装備はないはずだし。
「若様。青妖精の素材だとモーニングスターが作れないみたいだぞ」
「あー、そっかー。ちょっと本人に確認をとってみるわ」
……作れない装備もあったみたいだ。
モーニングスター、一般的な武器とは言えないのかな?
「確認が取れたよん。モーニングスターじゃなくてメイスでオッケーだってさ」
「わかった。そっちなら作れる」
「他は問題ないかな?」
「それ以外は大丈夫そうだぞ」
「オッケー。仮面の、解体は後どれくらいで終わる?」
「あと一匹分だ。もう少しだからもうちょっと待ってくれ」
「はいよー。やっぱり、宝石は回収したほうがよさげ?」
「うーん、ナイフの消耗数と俺の宝石回収数からいうと、各自六個くらいずつもらえれば赤字にはならないかな」
「了解。じゃあ、皆、解体が終わったら仮面のに宝石を七個ずつ渡してね。十匹も解体してるんだから、宝石十個以上は出てるだろうし」
というわけで、解体が終わった後、各自から宝石を回収することになった。
若様は七個と言ったが全員十個ずつくれたので、わりとうれしい。
……まあ、宝石ナイフの消耗を考えれば、自分のドロップ数も含めてそんなに増えてはいないのだけれどね。
「それじゃ、これで解散! 各自、道具職人に生産道具を準備してもらって、青妖精装備の準備に取りかかってちょうだいな」
「おう! 明日までにはバッチリそろえておくから、藍幻竜ガンバレよ!」
それぞれが若様に言葉をかけて工房を去って行く。
俺も若様を見送った後、フラスコのところに行って生産道具を作ってもらった。
その後は、自分の工房に戻ってひたすら依頼の装備を生産しまくりだ。
やっぱり、新しい装備の生産は楽しくていいね!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます