58.青妖精装備のお披露目
若様に青妖精装備を納めた日、残りの時間は自分の青妖精装備作りに充てさせてもらった。
いつも通りの装備一式をそろえるため、陣羽織はエミルに外注だ。
手甲と脚甲、ブーツ、頭防具のサークレットは自分で作れるので問題なし。
自前の装備を作っている間に、エミルに頼んでいた陣羽織も完成したと言う連絡を受けたので引き取りに行く。
「待ってたよ、エイト。しかし、青妖精装備、美しいね。今のところどこまで完成しているのかな?」
「手甲と脚甲までだな。持ってきているから、陣羽織といっしょに身につけようか?」
「お願いするよ。どんな感じになるのか見てみたい」
エミルからの要望通り、今完成している青妖精装備を身につけてみる。
水みたいな見た目に反して、冷たさは感じないんだな。
当たり前だけど。
「おお、やっぱり、じっさいに身につけるとかっこいいね。これは自分の分も作りたくなってきたよ」
「それなら皮系素材が余ってるから売っておこうか? 他にも若様から提供されたメンバーを教えるから、そいつらに頼めば余った素材を分けてもらえるかもだし」
「それはうれしいね。お願いするよ」
話がまとまったので、エミルに自分が使う分だけ残して皮素材を渡してしまう。
他に若様から素材を受け取ったメンバーも教えたので、何人かは皮素材を余らせているだろう。
エミルの装備は全身皮系の軽量装備だから、十分の数が集まると思う。
「それじゃ、ありがとな」
「こっちこそ、いい装備を仕立てさせてもらってありがとう。そういえば、君のお仲間は青妖精装備を作らないのかい?」
「ああ、あっちはまだ青妖精を倒してないんだ」
「なるほど。それなら、青妖精装備を作るときはうちをごひいきに」
「わかった。伝えておくよ」
エミルも相当気に入ったようだな。
さて、戻って残りの装備を作ってしまおう。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「えー、それじゃあ、エイト君は青妖精装備をそろえちゃったの?」
「ああ。素材もそろってたし、見た目もきれいで是非作りたかったんでな」
「ぶー、なんかずるい」
「ずるいと言われてもな。こればっかりは、『ヘファイストス』の依頼だから仕方がない」
「むー。私の装備に使えそうな素材は残ってないの?」
レイの装備か……うちに残っている装備だと金属素材になるな。
「そうだな。残りの素材を考えると、レイピアとか金属系装備になるな」
「本当!? それ、作れるの!?」
「作れるけど、素材持ち込みでない以上、正規の値段をもらうが、お金は大丈夫か?」
「うっ……それは……ギルドハウスの内装で結構使ったから厳しいかも」
やっぱりな。
でも、身内だからって、ここは値引きするわけに行かないんだよなぁ。
「それなら、今は諦めることだな。土曜日には『リーブズメモリーズ』で青妖精を倒しに行くんだろう? そのときまで待つといい」
「うーん、仕方がないか。それなら、エイト君が作った装備を見せてよ」
「まあ、そのくらいなら……ほら、これだ」
「うわ、今までの妖精系装備の中でも一段ときれい」
「だろ? 若様たちの装備を仕立てたら、大急ぎで自分の分の装備を作ったよ」
「うらやましいなぁ。手持ちのお金、カツカツになるけど、レイピアを依頼したくなるよ」
「そんなことしたら、素材持ち込みで依頼するときにお金が足りなくなるんじゃないのか? 青妖精素材はそれなりに市場に出回り始めてるから、あまり高く買い取れないぞ」
青妖精はそんなに強くないのか、実装初日から市場に素材が出回り始めた。
出回り始めた、と言っても素材品質はあまりよくないので、俺は買わないんだけど。
「うーん、そこが悩ましい。早めに青妖精を倒して、藍幻竜を倒さないとお金が稼げない」
「無理に藍幻竜を倒さなくてもいいと思うけどな。品質S+の青妖精装備なら水竜や青竜を討伐ができるだろうから、そっちの素材を集めてもいいと思うぞ。素材の品質と種類によっては俺も買い取るし」
「素材品質かぁ。エイト君の指導のおかげで高ランクモンスターでも品質Aで剥ぎ取れるようになったんだよね」
「いいことじゃないか。品質Aの素材なら喜んで買い取るぞ」
「でも、どちらにしても、まずは青妖精を倒さなきゃだよね」
「そうなるな」
青妖精を周回して素材を集めることが大前提だからな。
それができなきゃ、次のステップに進めない。
「エイト君、青妖精を倒しに行くときって、いっしょに来てくれる?」
「そうだな……時間が空いてればいけるが、状況次第だな。場合によっては、若様から急ぎの依頼で藍幻竜装備を依頼されてるかもだし」
「若様、ってことは『ヘファイストス』は藍幻竜を倒せたんだね」
「のようだな。今は倒し方の指南動画をまとめるために周回しているらしいぞ」
「周回できるくらいには倒してるんだ……」
「何か弱点があるみたいだな、今回も。まだ、藍幻竜装備を依頼されていないってことは、青妖精装備でも余裕があるってことなんだろう」
余裕がないなら、前回みたいに特急依頼で藍幻竜装備の生産をお願いされるはずだし。
「同じプレイヤーとしては、そんなに周回できるのはうらやましいなぁ。私たちも、紅幻竜のときは周回してたけど」
「まあ、倒し方がわかればそんなものだって」
先に周回して素材を独占できるのは、最速討伐者の強みだからな。
「……さて、そろそろ、依頼されている装備の生産に戻りたいんだが、いいか?」
「依頼されている装備って、青妖精装備?」
「だな。まだ、青妖精の生産道具が行き渡ってないから、すでに持っている俺たちが生産依頼を請け負ってるんだ」
「そうなんだね。お仕事、邪魔しちゃってごめんね」
「いや、いい息抜きになったから問題ないさ」
「そっか。それじゃあ、生産頑張ってね」
「ああ。またな」
レイも帰って行ったし、依頼されている装備を作らなくちゃな。
早いところ『ヘファイストス』の生産者に青妖精の生産道具が行き渡るといいんだけど。
それまでは俺たちが作るしかないよな。
依頼金額もそれなりにおいしいし、今日も頑張ろう。
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