55.竜墜砲・試製一式 2

「さて、次の検証ですね」

「そうだな。次は何を検証するんだ?」

「オプションパーツの対竜シールドを検証してみます。すみませんが、一撃受けてみますので、ブルー先輩はブロックせずに見ていてください」

「わかったよー。むちゃしないでねー」


 三度照準をワイバーンにあわせてトリガーを引く。

 ワイバーンが墜落しない程度にダメージを与えながら、こちらに引きつける。

 そして、ワイバーンが目前に迫ったとき、シールド機構を展開させてワイバーンの体当たりを受け止める。

 被ダメージは三千ちょっとか、想定の範囲内だな。


「エイト、大丈夫かね?」

「こっちは平気です。ワイバーンを倒してもらっていいですか?」

「わかった。こちらで倒してしまおう」


 さて、こっちは今のうちに回復とシールド機構が壊れていないかを確認しておこう。

 ……うん、さすがに一回でシールドが壊れることはなかったな。


「エイト君、すごい音がしてたけど大丈夫だった?」


 ボウガンの点検をしていると、レイが声をかけてきた


「ああ、大丈夫だったぞ。思ったよりも頑丈にできていたようだ」

「それならいいんだけど……あのシールドってこういう風に使うものなの?」

「んー、正確には違うかな。このシールドは物理防御よりも魔法防御向けに開発してるんだよ。だから、ドラゴン相手で最大の効率を発揮できるのは、ドラゴンブレス……のはずなんだ」


 さすがに、まだ、ドラゴンブレスに挑む度胸はないけどね。


「今回はワイバーン相手だったから、物理攻撃の体当たりを受け止めてみたわけだけど……こっちも想定より優秀な防御力だったぞ」

「そうなんだ。それじゃあ、シールドのほうはバッチリってこと?」


 防御力方面では今のところ問題ない。

 ただなぁ……。


「シールドを展開すると、前面がほとんど見えなくなるのが難点だな。相手の攻撃が当たる瞬間がわかりにくくて、インパクトの衝撃をそらすタイミングがとれない」

「そうなの? でもそれって仕方のないことじゃない?」

「その辺は本職に聞いてみるか。おーい、ブルー先輩」


 三匹目のワイバーンを倒し終わって、解体するところを見ていたブルー先輩を呼んで、盾で攻撃を受けるときのこつを聞いてみる。


「うーん、やっぱり、盾で攻撃を受けるときは、受け止める瞬間より前は盾を少しずらしておいて、相手の姿を確認しながらやってるかなー」

「ですよねぇ」

「だよねー。そう考えると、エイト君のあのシールドって、前方を円形にすっぽり覆っちゃうから、前が見えなくて大変だよねー」

「いや、本当に大変ですよ。どうしたらいいか悩むほどに」


 本当に、どうしたらいいかな。

 盾の機能をオミットするには、惜しい……と言うか、今回のコンセプトに合わなくなる気がするんだよね。

 あくまでも、『単独で竜を相手取ることができるボウガン』がコンセプトだから。


「うーん、あの盾って小型化できないのかなー?」

「難しいですね。あの盾はドラゴンブレス対策がメインなんですよ。あの大きさがないと、ドラゴンブレスには耐えられないはずなので」

「ああ、ドラゴンブレスかぁ。なら仕方がないよねー。じゃあ、シールドを透明にするとかどうかなー?」

「先輩、さすがにそんな改造はできませんって。そうだよね、エイト君?」


 シールドを透明に、か。

 ふむ、やってみる価値はあるな。


「できないこともないですね。ひとつ目は、シールド部分を半透明な素材で作ってしまうこと。問題は、コストがかかることと、ダメージ耐性がどうなるかが不透明なことですか」


 ひとつ目の案を出したところで一息つく。

 思いつきで出しているが、自分でも悪くはない案だと思っている。

 素材の値段はお察しなのだが。


「ふたつ目は、シールドを物理的なものから、TP消費型のバリア発生器に変えてしまうこと。この場合、バリアが透明なので視界はひとつ目よりもクリアになりますね。問題点はTPの消費が激しいので、攻撃能力が下がること、製造コストはひとつ目よりも高くなりそうなことですね」


 ふたつ目は、ひとつ目よりもさらにコストが増している。

 バリア発生器とか、鍛冶じゃなくて錬金術の分野だし、本当にコストは高そうだ。

 攻撃を受け止めている間は常にTPを消費し続けるため、攻撃が終わったときの反撃がスムーズにできそうにないとか、攻撃を受けている最中にTPが切れたらどうするのだろか、そもそもバリア発生器を誰に頼むのだとか、問題が山積みだったり。


「少なくとも、シールドは半透明なほうが良さそうですね。ありがとうございました」

「大丈夫だよー。それで、まだワイバーンを狩るのー?」

「そうですね。あと二~三匹倒したら終わりにしましょうか」

「了解ー。皆にも伝えるねー」


 その後のワイバーン狩りも順調に推移していった。

 ボウガンの性能的には、有効射程がもう少し長めにほしい他は十分に実用圏内であった。

 ただ、細かいところの不満を言うと……。


「うーん、やっぱり発射形式は『連射』じゃなくて『集弾』のほうがいいかな」

「エイト君、『連射』とか『集弾』って何?」

「うん、ああ、ボウガンの弾の発射形式。俺が今日使ってた連続で弾が飛んでいく形式が『連射』、同時に発射してひとかたまりに飛んでいくのが『集弾』だな」

「そうなんだ。どっちがいいの?」

「状況によりけりだな。確実に当てたいなら『連射』のほうが当たりやすい。逆に火力を求めるなら『集弾』のほうがいい」

「エイト君は火力を追求してるんだよね? じゃあ、『集弾』なんじゃない?」

「……だな。ここもカスタマイズしておこう」


 こうして、一回目の竜墜砲試験は終了した。

 今回の試験結果をベースにして、さらなる改良を進めていくことになる。

 もうすぐ、青妖精たちも実装されるからな。

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