54.竜墜砲・試製一式 1

日曜日なので早めに公開です。

あと、ストックが大分たまりましたのでしばらくの間は毎日公開で行きたいと思います。

よろしくお願いします。


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 そして迎えた土曜日、『リーブスメモリーズ』の全員が集まってワイバーン狩りに行くこととなった。

 この日は全員が都合がつくということで集まることとなったのだが……ブレンのやつが遅れての集合となった。


「ブレン君、遅いよー」

「ごめん、レイさん。勉強が長引いちまって、晩ご飯が遅れたんだよ……」

「ふむ、勉強のほうがあまりはかどっていないようだな。なんなら、放課後にでも少し勉強を見てやろうか?」

「え、いいんですか? フォレスト先輩!?」

「私にとっても復習になるからな。来週から放課後、部室で一時間程度勉強を見てあげよう。エイトも来るかね?」


 勉強かー。

 特に急いではいないけど、少し見てもらっておこうかな。


「そうですね。とりあえず一週間ほど行ってもいいですか」

「わかった。それでは放課後、部室でな」

「はいはい! 私も勉強をしたいです!」

「よかろう。ふたりも三人もかわらないさ」

「やったー! これで皆いっしょに勉強だね!」

「お、おう」

「がんばれよ、ブレン」


 俺は適当にやるけど、ブレンは本気でやらないとついてこれないだろう。

 なんというか、ご愁傷様。


「勉強会はいいとしてだ。今日の準備は大丈夫なのか、エイト」

「大丈夫ですよ。試作していたボウガンのプロトタイプ『竜墜砲・試製一式』を持ってきました」

「おお、『竜墜砲・試製一式』か! なかなかすごい名前じゃないか!」

「ちょっと厨二的な名前になってしまいましたけど、この武器を正しく示すにはこの名前が正しいんですよねぇ」

「そうなんだねー。それで、このボウガンでできることって何なのー?」

「えーとですね。このボウガンは、対竜特化のボウガンになっています。オプションパーツなしで『滅竜属性++』がついています。これによって、ドラゴン系……竜属性のモンスターには、ダメージが常に15%増しとなります」

「常に15%増しとか、えげつねぇな……」

「さらに、各種オプションマガジンを扱えるので、弱点属性による直接攻撃が可能になっています。そのほか、防御系も『対竜耐性』がついているので、同じように竜属性のモンスターからのダメージを10%軽減できます」

「うむ、本当に対竜特化なのだな」

「もちろん、竜以外にも使えますけどね。竜を相手にするのが一番ですよ」


 そのためのボウガンだからね。

 できる限り、竜を相手にしたい。


「それで、今日はワイバーンが相手なのか」

「ワイバーンも竜属性持ちのモンスターですからね。そこまで属性値が高く無いので、効果は薄めですけど試し撃ちには十分です」

「了解した。それで、私たちはどうすればいいのかね?」


 今日は六人全員が集まっている。

 俺がボウガンで遠距離攻撃をするなら、タンクがひとりに遠距離がふたり、近接が三人だ。


「そうですね……ワイバーンを撃ち落とすのを優先するので、とりあえず、俺が先制攻撃をします。それで地上へ落下したら、近接三人で倒してしまってください。落下しなかったら、ブルー先輩がタゲをとってフォレスト先輩も攻撃に参加してもらえますか?」

「承知した。皆もいいな?」

「わかりました!」

「了解だ」


 今日の予定も伝えたし、ここから先は俺が頑張るところだな。


「まずは一匹目……行きます!」


 竜墜砲・試製一式を構えて機構を展開する。


「おぉー!」

「すげぇ!」

「ふむ、面白いな、これは!」


 外野で歓声が聞こえるがとりあえず置いておこう。

 セットする弾丸は基本装備の『強化通常弾+』をセットだ。

 スコープに描かれたレティクルをワイバーンにあわせ、トリガーを引く。

 バシュバシュと気持ちいい音を立てて弾丸が発射され、ワイバーンの頭部にヒットするのをかくにんした。

 さすがに一回の攻撃では撃ち落とせなかったみたいで、こちらに向かって飛んでくる。

 こちらも慌てずに、再度照準を合わせてトリガーを引く。

 そんな攻撃をマガジンがつきるまで繰り返すと、ワイバーンが失速して墜落した。


「よっしゃ、墜落したな! レイ、ブレン、とどめを刺すぞ!」


 ワイバーンは飛行中、短時間で一定以上のダメージを受けると失速して墜落する。

 墜落したワイバーンは、しばらくろくに身動きがとれないので近接プレイヤーの獲物というわけだ。


「ふむ、マガジン一本で墜落まで持って行けるか。なかなかの高火力だな。さすがの竜墜砲と言うべきか」

「んー、計算よりも二割くらいダメージが少ない気がしますね。有効射程が足りてない?」

「あれでも満足していないのかい?」

「満足していないですね。オプションパーツなしで有効射程を二割延長するしかないかな……?」

「そんなことできるのかね」

「できないこともないです。必要な素材さえあれば、まだまだ改良できますからね」


 だからこその試製一式だ。

 もっといろいろ改良する余地ははある。

 改良すべき点を見いだして、優先順位を見つけるのが今日の課題なんだから。


「おーい、ワイバーンの討伐終わったぞ。エイトが解体するのか?」

「ああ、そうですね……解体したい人がいないなら俺がしますけど、誰か解体します?」

「そうだな、では私が解体しよう。スキルトレーニングにちょうどいい」

「了解だ。任せたぜ、フォレスト」


 討伐一匹目の解体はフォレスト先輩が行い、素材アイテムの品質は中程度だった。

 フォレスト先輩が解体をしている間に、マガジンを『強化通常弾+』から『強化対竜弾+』に切り替えた。


「さて、二匹目、行きますよー」

「はーい。頑張ってねー」


 先ほどと同じように狙いを定めてワイバーンを攻撃する。

 弾丸の種類を変えたことで、攻撃一回の発射弾数が変わったが、一度の攻撃で与えられるダメージは増加している。

 その結果……。


「ふむ、四回の攻撃で墜落したか」

「マガジンに一発残ってますし、ダメージ効率は上がってますね」

「何を交換したのかな?」

「マガジンを変えました。最初は『強化通常弾+』だったのを、二回目は『強化対竜弾+』に変更しました」

「……強化通常弾? 強化弾ではなく?」

「強化、通常弾です。それもプラスがつくのでかなり強化されてますね」

「……かなり強いんじゃないのか、そのマガジンパーツ」

「強いでしょうねぇ。色竜の爪や牙、骨から作ったオリジナルパーツですから」


 作ったマガジンパーツの強さにあきれられながらも、二匹目のワイバーン討伐も無事にクリアできた。

 さて、次の検証を始めよう。

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