episode:6 ヤキモチ
小田くんがポケットに何かを隠したのに気づいていた。
さっき2階の人は「連絡頂戴」と言っていたから...きっと連絡先の書いた紙なんだろうな。でも、なんで小田くんは隠したのかな。透くんに突っ込まれたくないから?やましいことがあるから?なんでこんな朝早くに部屋にいたの?
聞きたいことは沢山あった。モヤモヤした気持ちに心が押しつぶされそうだった。
「花島なにか飲む?」
いきなり声をかけられて体が跳ね上がった。
「紅茶とココアしかないけど」
「紅茶なんて女子かよ」
透くんが突っ込んだ。私はクスクスと笑った。
「紅茶でお願いします」
「了解」と言ってティーカップを用意する小田くんはホントに女子力が高くて笑えて来る。
聞きたいことは沢山ある...。でも、聞けないのが現状で...。
だってなんの関係もないから...。
私は小田くんが好きで...ただそれだけだ。小田くんは優しい。きっと私が聞いたらしゃんと答えてくれるだろう...でももう傷つきたくないんだ...。
私はふと透くんの顔を見た。
「あつッ」といいながらココアをすすっていた。
「てか、あの人が2階の?」
「うん。朝食作ってくれた」
心がズキズキした。きっとなにか理由があったにしろ私はあの人をずるいと思ってしまう。そんな自分にも嫌気がさしてくる。
小田くんは事の流れをすべて話した。透くんは相槌をうちながら、私は黙って聞いた。
「なんかすげー人だな」
一通り聞いた後に、透くんが関心していた。
「いやいや、こっちからしたらいい迷惑だよ」
「でも料理は美味かったんだろ?」
「かなり、めちゃくちゃ」
透くんがチラッと私を見た。顔色を伺われた気がして目線をそらした。
急に小田くんが立ち上がり、テレビの横から何かを引っ張り出してきた。
「なんだそれ」
透くんが目を細めてジッと見た。私は見覚えがあるものだった。一昨日、井手さんが渡してきたダイエット器具だ。
「昨日話したやつ。これを使った感想が知りたいらしくてさ」
そういってステップ台に乗った。
井手さんに連絡する...そう考えただけで涙がでそうだった。こんなに自分の気持ち余裕がないのは、相手が大人の女性だからだろうか。
「どう?」「結構ふくらはぎに来るかも」
小田くんと透くんが横で会話しているのを、ただただボーッと見ていた。
「花島もやってみる?」
ボーッとしている私に気づいた小田くんがステップ台から降りて私に聞いた。
私は慌てて「大丈夫だよ」と笑った。
私は完全に井手さんにヤキモチを焼いてる。
私は感情を押し殺した。
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