第231話 最強への道
◇
フスティシア王国は、比較的歴史の浅い新しい国だ。
高潔な騎士であった初代国王により、周辺の移民達をまとめあげて作られた騎士の国。
現国王は、2代目。
騎士であった初代国王から高潔な心を受け継いだ偉丈夫。イライジャ・フスティシア。
王でありながら剣の達人でもある彼は、強い武人を好むことで有名だった。
今、王城の謁見のまで、イライジャは嬉しそうに眼を細めて目の前の人物を称えていた。
「よくぞ邪悪なる魔王を討ち滅ぼした。貴殿のその強靱な肉体と高潔な精神を称えよう」
国王の前で片膝をつく大男。
魔王殺しの栄誉を受けたウィリアム・J・ビルドゥは、頭を下げながらも不敵な笑みを浮かべている。
ウィリアムは流れ者の冒険者だ。
しかし、魔王を討伐した勇者をイライジャが拒む理由は無かった。
「顔を上げよ冒険者ウィリアム・J・ビルドゥ。そなたに褒美を取らせよう。さぁ、願いを言うが良い」
国王の言葉に、ウィリアムはゆっくりと顔を上げた。
褒美・・・・・・もう、ウィリアムの望みはすでに決まっている。
ウィリアムは、堂々とした声音でその願いを告げた。
「陛下・・・・・・この私に騎士の位をいただけないでしょうか?」
◇
「・・・・・・何が狙いだ冒険者?」
謁見の間からの帰り道、ウィリアムが王城の長い廊下を歩いていると、背後から冷たい声がかけられた。
振り返ると、そこには目つきの鋭い白髪の武人が一人。
ウィリアムは、目の前の人物が自分に気づかれずにこの距離まで近づいてきたという事実に感心した。
只者では無い。
フスティシア王国にこれほどの武人がいるとは予想外だった。
「質問の意味がわからんな? そもそも、俺とアンタは初対面の筈だが?」
「私は騎士ファルケ・マハト・・・・・・陛下の刃であり盾だ。故に、陛下を害するモノを見逃しはしない」
「ほう・・・害するとはずいぶんな言いぐさだ。俺は仮にも魔王殺しの英雄なのだがな」
「貴様は根無し草の冒険者だ。故に、名を上げたいのならばもっと大国に自分を売り込むこともできただろう? だから問うているのだ・・・”何が狙いだ” とな」
ファルケの問いに、ウィリアムはニヤリと口角をつり上げた。
「国の大小に興味はねえよ。俺は最強の男だ。どうせ俺が所属する国は、最終的に世界一の大国になる・・・いや、世界一にしてみせる。重要なのは、国のトップが俺が担ぐに相応しい男かどうかだ」
ウィリアムは一歩前に進んだ。
少しかがみ込むようにしてファルケに視線を合わせる。
「よろこべよ騎士ファルケ・マハト。この国のトップは・・・・・・騎士王イライジャ・フスティシアは俺が担ぐに足る男だ。故に、俺がこの国を天辺まで押し上げてやる」
◇
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