第232話 決意

 曰く、魔王サジタリウスを打倒した英雄。


 曰く、常勝不敗の騎士。


 曰く、王国を導く救世主……。







 騎士ファルケ・マハトはギリリと歯ぎしりをした。


 アレはただの蛮族。力は強いが騎士たる誇りなど少しも持ち合わせていない。


 冒険者なぞ、野党より少しましという程度の野蛮なやつらだ。


 ファルケは難き男を思い、不愉快だと頭を振った。


"ウィリアム・J・ビルドゥ"


 魔王を討った出自不明の男は、その功績を讃えられ、国王より騎士の称号と領地を賜った。


 騎士の国と呼ばれる、このフスティシア王国において、騎士の位を戴くことの意味は他国と比べても大きな意味を持つ。


 ウィリアム・J・ビルドゥ。


 やつは獣だ。


 やつの存在は決してこの誇り高き騎士の国のためにはならないと、ファルケは確信していた。


 屋敷の外から民衆の騒ぐ声が聞こえる。


 噂をすれば影。

 騎士ウィリムが、戦を終え凱旋したきたらしい。


 民衆は皆やつの功績と、その強さに目がくらんでいる。


 否


 民衆だけではない。


 やつに騎士の位を与えた国王も、他の棋士たちもそうだろう。


 自分がしっかりしなくては……。


 ファルケは自室の窓から空を見上げ、ギリリと歯を食いしばったのだった。


 

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