第185話 連れ添い
手頃な洞窟でもあれば良かったのだが、特に見当たらなかったので、先ほどのたき火をしていた場所まで戻る。
再び火をおこして、先ほど仕留めた2羽の鳥をナイフで捌いて火で炙った。
独りで過ごすのならば、夜は火無しで敵の襲撃に備えるつもりでいたのだが、連れができた以上(そして彼女がだたの人間である以上)、火を焚かずに夜を過ごすと最悪凍死してしまう可能性すらある。
(・・・取りあえず飯を食わせて、体を小川で洗ってからたき火で暖まらせるか。敵の襲撃については俺が注意するしかないな)
速見は人間よりはるかに丈夫にできている。ダメージを負っているとはいえ、1週間ほど睡眠を取らなくても問題は無い(もちろん、その分回復は遅くなってしまうが)。
こんな非常事態に、馬鹿な事をしているとは自分でもわかっている。しかし、何故だかこの少女を見捨てる気になれなかったのだ。
警戒して、少し速見とは距離を空けて座る少女に、ほどよく焼けた肉を差し出す。木の枝に刺した肉汁のしたたる鶏肉。警戒を顕わにしている少女だが、よほど腹が減っていたらしく、ビクビクと怯えながらも肉を刺した木の枝を受け取った。
小さな口でソッと肉にかぶりつく。
一口食べたら食欲が完全に勝ったのだろう。脇目も振らずに一心不乱に肉にかぶりつく少女。その様子を優しい目で見つめながら、速見は木の枝をナイフで削っていた。
先端を鋭く尖らせて軽く火で炙る。火で炙った先端は、簡易的な鏃となる。こんな脆い矢では、通用するのは小動物程度のものだろう。大型の獣相手では皮膚を貫通することすら出来なさそうだ。
武器が欲しい。
魔法武器とはいわずとも、せめてちゃんとした弓矢があれば少しはマシなのだが・・・。 手元のナイフに視線を降ろす。
刃渡りは15センチほどの小さな刃、いざとなったらこのナイフだけが頼りなのだと思うと、妙な感覚だった。
ふと隣を見ると、どうやらお腹がかなり空いていたようで、少女は先程与えた鶏肉をすでに食べ終えていたようで、澄んだ瞳で速見を見上げていた。
その無垢な姿を見ていると、何だか小難しく考え込んでいたことが馬鹿馬鹿しく感じられてくる。
「・・・・・・まあ、気にしてもしょうがねえか。なるようになるさ」
◇
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