第132話 帝国軍VS王国騎士団

「フハハハッ! 素晴らしきかな ”スマッシャー”。あのフスティシア王国の先兵がまるで相手にならんではないか!」





 興奮したようにそう叫ぶ初老の男は、グランツ帝国の軍事最高司令官、レイ・ヴァハフント将軍。





 長年戦場に身を置いてきたその体は一分の隙も無く鍛え混まれており、そのガッシリとした体躯と鋭い眼光は年齢による老いを一切感じさせない。





 レイ将軍がグランツ帝国の女帝から預かった新兵器 ”スマッシャー” の数は8千。兵の数は5万。




 先ほどやってきた王国の先兵は、スマッシャーによる攻撃で一瞬で肉片と化した。凄まじき無双の軍勢、恐らくこれほどの攻撃力を持った軍勢は歴史的に見てもこの軍が初めてでは無いだろうか?





「・・・さて、問題は史上最強の騎士にこの兵器が通用するかどうか・・・だな」





 高笑いをしていたレイ将軍は、少し冷静になるとポツリと自問した。





 確かにこの軍勢は最強だろう。世界最強と称されるフスティシア王国の王直属の騎士団が相手でも圧勝できると将軍は考えている。





 しかし史上最強の騎士、アルフレート・ベルフェクト・ビルドゥが相手ではどうだろうか? 普通に考えればいかに強かろうが個人の力などたかが知れている。しかしその普通から逸脱しているからこその ”史上最強”なのだ。





 かつて将軍はアルフレートの戦いぶりをその目で見たことがある。





 相手は何てことは無い小国だったとはいえ、奴は連れてきた騎士団を使わずまるで己の力を誇示するかのように単機で国を滅ぼしたのだ。





(・・・アレは人間の所行では無い。今から対峙する敵は人では無く化け物なのだと肝に銘じねばな)




 そう気を引き締めた将軍は、自軍に合図を出して前進を開始した。





 目指すはフスティシア王国。今こそ王国を世界の頂点から引きずり落としてグランツ帝国こそが世界一の国家なのだと照明する時だ。





「将軍閣下! 正面より騎士アルフレートの率いる騎士団の姿が見えました!」





 兵の報告を聞き、レイ将軍はぶるりと武者震いをした。





 体の奥底からアドレナリンが湧き出て活力が漲ってくる。





「さて・・・決戦だ! 我が帝国軍こそ最強だと証明する時ぞ!」





 腹の底から響く将軍の大声に、兵達は鬨の声を上げた。





 士気は高く、勝機も十分。レイ将軍はヒタと目の前を見据える。





 戦が、始まるのだ。








 

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