第4話 帰り道
「さぁ、行こうか…。」
ゆっくり立ち上がると店を出た。
私は妙な緊張を感じながら彼の後ろを追う。
そういえば、昨日、夢で見たようなこんな事があったような気がする。
二人ずつ帰る帰り道。
彼との帰り道。
「トモさん…。」
急に歩く足を止めて彼は振り向いた。
「今日は楽しかった?」
「うん。」
彼と向き合った。
私は顔にかかった髪をそおっと払いのける。
指先がなぜか少し冷たい。
彼が近づく。
心臓がドキドキする。
彼はキスしようとしてるのか…。
ー どうしよう…。
すると突然、
「そうだ、トモさん。」
と私の肩に手を置いた。
「今度、バスケの試合があるんだ。僕、頑張ることにするよ。」
彼はリラックスした姿勢でニッコリ笑った。
私はそんな彼を見て少しホッとした。
「今度の日曜ね。私も試合があって、応援にいけないけど、がんばってね。でも、1年生だけど、試合に出れるの?!」
「そうなんだ、先輩たちの試合が終わったあとに1、2年生チームが試合するそうだ。」
「へえー、なべくんも試合に出れるんだ。」
「そう、僕と小野と川田と3人が出れそうなんだ!!いつも、日記にも書いてるが、5対5のAパターン、Bプレーパターン、セットプレーをやってみようと思うんだ。小野がポイントガードだから、彼にまかせるけど…。僕は中からも外からも狙っていくよ。」
といつになく真剣に語る彼。
今度の試合が楽しみになっているようだ。
私達は、公園の中のベンチに座りながら話た。
どこ吹く風が彼の匂いを運んでくる。
「あっそうだトモさんコレ…。」
かばんの中から日記を取り出すと私に渡す。
「なかなか手渡せなくて…。」
彼の匂いが風につたい体をそおっと包み込んだ。
短すぎる時間がいいタイミングになっていく。
今までの2人の間は何かしら行き違いがあった。
「また、日記、明日持っていくね。」
深く呼吸をした。
二人は立ち上がると、ゆっくりと歩きだす。
他人から見て、もう何年も付き合ってるカップルに見えるかな。
不思議な縁だった。
彼は私の家の近くまで送ってくれた。
「じゃあ。」
゛じゃあね ゛
と遠くなっていくまで見てた。
私は目を閉じた。
心地いい風が頬を撫でる。
彼と私。
小さい頃の私は中学生にあこがれていた。
子供から少女。
本気で彼のことが好きになっていた。
そしてこれから先も彼はそばにいてくれるだろう。
彼と別れてからの私はすぐ、自分の部屋へと駆け上がっていった。
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