第3話 ユーモラスな映画
この街の駅は人通りも多くて、街としては栄えてるほうだった。
コンビニの横を通り駅に向かう。
「さぁ、時間もあと少しだよ。上映時間まであと1時間しかないから、行くとするか…。」
と浜りんが言った。
はっとするように、
「ごめん。私、待たせて悪かったね。」
と言うと
「そんな事ない、ない、行こうか。」
となっちゃんは手をヒラヒラさせてニコニコと笑った。
私は額の汗をハンカチで拭うと両手を合わせた。
なべくんは不機嫌な顔をしてるだろうと目を合わせると反対に口をほころばせる様に笑ってた。
「じゃあ、行こうか。」
浜りんは時計をちらりと見る。
そしてあわててきっぷを買う。
皆もあわてて買うとホームへと急いだ。
映画館の中に入ると休日のせいもあって、意外とたくさんの人がいた。
人混みの中をかき分けるように中にはいった。
映画といえばおきまりのポップコーンだ。
「飲み物と何かおやつでも買って入るか?。」
「何か買ってから入ろうか。」
私はショーケースに入ってるお菓子とパンを眺めていた。
「トモさん…。」
しなやかな優しい声。
なべくんはニッコリ笑って、ジュースとパン、お菓子を買って立っていた。
なんでだろう。
なべくんといるとホッとする。
ちょっとだけ嬉しかった。
一緒にいるとなぜか安心する。
「なんで私の食べたいものがわかったの?!」
「わかるよ。トモさんのことなら…。」
「やだぁ、本当?」
「イヤじゃないって言えよ。」
そんなことを言いながら2人で、笑った。
そして彼の後ろについて歩いていく。
彼との初めてのデート。
私の周りは少し緊張した空気が張りつめているが、映画館の中は違っていた。
コミカルな感じの映画で、客席は笑い声でいっぱいだった。
「トモさん、人でいっぱいだから空いている席が見当たらないなぁー。」
本当だ、周りを見ても立ち見の客でいっぱいだ。
なべくんと私達は、空いているはしの場所で映画を見ることになった。
ユーモラスな映画だった。
私達、女の子も一応、賛成したけど、男の二人のリクエストでもある映画だった。
「面白いね、海外の映画でこんなふうな感じの映画があるんだ〜。」
スクリーンの中の主人公は、カンフーを使い体とアクションで笑いを取っていた。
恋愛映画という感じでもなく、今が楽しければいい…、という映画だ。
買ってきたコーラにくちをつける。
その味も刺激的だ。
この映画も、コーラの味も忘れられないだろう。
4人とも映画を見終わると外に出た。
「お腹空いたねー。」
「そうだね。とりあえず二見駅に戻ろう。」
すぐさま自分たちの街に帰る事にした。
「この店にしようか…。」
選んだ店は、私がよく来るハンバーガーショップだ。
店に入ると4人座れる席を見つけた。
コーヒーとバーガー、ポテトのセットを頼むと男女、向き合った。
ホッと一息つくコーヒー。
コーヒーのほろ苦い味。
少し大人になった気分。
カップからの湯気が立ち上って、ゆっくりと消えていく。
私はコーヒーをコクリと一口飲む。
彼は、テーブルを挟んで楽しげにつぶやいた。
「ん…美味しそう…。」
かぶってる帽子を脱ぎ、ハンバーガーの包み紙を開けて、食べだした。
「私、この店によく来るのよ。女子バスケ部員のお気に入りの店なの。試合が終わったらよく寄っていくの。私達はここのメニューを言い方を変えて言ってるのよ。ハンバーガーの事を肉ばさみ…。ポテトフライを揚いも。店の人にこのセットをくださいと頼むの。面白いでしょう?」
私はいつになく、余計なことまでベラベラと喋りだした。
どう見たって可愛い女の子に思えない。可愛くしなきゃ…。そんな気持ちが私を特別に見せようとしていた。
店内の空気は少し暑かった。
私はワンピースの一番上のボタンを開けた。
彼は私をちらっと見ると、
「トモくん…。このハンバーガーの呼び方誰が考えたの?面白いね。」
「そう、面白かった?」
というとなべくんが笑った。
なっちゃん達も笑った。
彼女が笑うと柔らかい髪が揺れた。
ふんわりと優しい雰囲気。
いいなあ〜なっちゃん。
乙女心は複雑で単純だ。
「これ食べたらどうする?」
「食べたら家まで送っていくよ。」
と浜りんが言う。
「サンキュー、それじゃぁ帰りは別々ね。」
となっちゃんが言った。
「ぼくも送っていくよ。」
なべくんが言うと心臓がドキンとなった。
私は慌ててコーヒーを飲み干した。
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