2.神との出会い

 気がつくと、俺は光の中にいた。意識が戻って来ると同時に、踏みつけられた痛みが戻ってきた。


「っつ!ぐっ、がはっ。」


 ボタタッ


 どこかの臓器がやられでもしたのか、血をはいてしまう。


「カー、フー、クソッ。どうして俺がこんな目に…!くそっ!カフー…」


 肺がやられて、呼吸すらまともに出来ない。だが、そうこうしているうちに周りに変化が現れ始める。だんだん光が薄れていくのだ。それは、目がなれたのもあるだろうが、光自体も光量が落ちていっている。それと同時に周りにいるクラスメート達に気付く。そして、周りにいた生徒たちも起き始め、だんだんとざわめきがひろがっていく。

 そして、最大の変化が現れる。それは、


「さあ、召喚されし勇者たちよ!アルスレン神国にようこそ!勝手ですまないとは思うが、どうか我らに力を貸してくれ!」


 と、いきなりふざけた事を言ってくる、白を基調とした豪華なローブを着た老人と、これまた白を基調とした天の衣のようなものを身に纏った女性と、その周りにいる屈強そうな男たちである。男たちは、鎧を着て、槍を持った完全武装で、いつでも俺達を取り押さえられるように身構えている。


 (なんなんだこの茶番は。くそっ。全員死にやがれ!)


 だが、俺の気持ちなど何にもならず、話が進んでいく。こちらで最初に発言したのは、やはりというか、神谷である。


「おい、あんたらだれだ?訳わかんねー事言ってねーでさっさと俺らを戻せ!」

「おっと。これは失礼しました。私は、この神国の国王である、アルスレン・レイド・ハウリックと申します。以後、お見知りおきを。」


 (ホントになんなんだ。ここは。現実世界じゃないのか?それならそれでいい。だが、どうなのか。最近小説で見たようま異世界に転生するとかそういうやつなのだろうか。)


 等と考えていたら、神谷が怒鳴っていた。


「ふざけんな!以後も以前もねえ!さっさと俺らを帰せ!おい!そこのババアも黙ってねえでなんか言えやコラ!」


 言った瞬間、空気が固まった。いや、もちろん固まってなどはいない。だが、そのぐらいの圧が俺達を襲った。それは、周りをとり囲んだ男たちから発せられたものだ。今にも殺しにかかってきそうな雰囲気だ。だが、その女性は、


「構わん。そのぐらいの歳はくっておる。」


 と、落ち着いていた。だが、先程の老人は少し怒り気味に、こう言った。


「確かに勝手に召喚して怒っているのはわかる。じゃが、この方は、この神国の最高位である女神、アルスレン様である!神に対してそのような言葉使いは不遜であるぞ。そこは理解いただきたい。」







「………………は?」







「誰だ!今何か申した者は!名乗りでよ!」


 ついに周りの兵士がキレたが、それどころではない。


「今、神。神と、そう、言ったのか?」

「お前か!無礼者!そうだ!この方は、神だ!そんな事も分からん者が勇者など…!」

「そう、…か。そうか。は、はは。ハハハハハハ!」


 俺は、つい、笑ってしまった。さっきの痛みもなぜかかなり和らいだ。だが、それもしかたがない。今まで怨み、憎み、憎悪していた神という存在。それが目の前にいるのだから。ならば、やることはひとつしかないだろう?そう。殺す。神というその詐欺師のような存在を。


「死ぃ…ねええ!くそ神があああ!」


 (仏様!俺にあいつを倒せるだけの力を!)


「ウオオアアアア!!!」


 俺は、雄叫びをあげながら突っ込んだ。周りは、それがあまりに唐突だったためか、反応できていない。俺は右拳を握り、それを振り上げながら全力でもって神に殴りかかる。


「アアアアアアアアァァッ!」


 すると、いきなり、右拳が光を帯びた。俺は驚きながらもそのまま拳を降り下ろした。しかし。


「おや。いきなり魔力纏いをやってのけるとは。やはり、勇者と言ったところか。」


 ガキィッと音がして、拳が神の10センチほど前で弾かれた。まるで、神の周りに見えない壁があるようだった。


「クソがッ!」


 俺の特攻は失敗におわった。それは俺の生命の終わりを示していた。神に対向した者の末路。それは、火を見るより明らかだった。


「我に拳を向けるとはいい度胸だな。まあ、ちょっと惜しいが、我に攻撃をしたのだ。…とっとと死ね。」


 そう言って俺に手を向ける。何をするのか、と思った瞬間。女神の手が光った。そして──


「さようなら。」


     どっ、バチャッ


 俺は、再び死んだ。

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