神に殺された勇者はスキル「仏」で復讐する
@mikuru-mikan
1.神を怨んだ少年
ーーー神は救いではない。ーーー
これは、俺-黒木修羅が6才の時に感じたものだ。
俺の両親はキリスト教の信者だった。ただし、多くの日本人のような中途半端なものではない。完全な信者だった。いや、それも違う。狂信者、それも、かなりタチの悪い。
奴らは稼いだ金を自分たちの宗教のために使い、ろくに子育てをしなかった。さらにはその教えを永遠にいい続け、俺は毎日聞かされた。
だが、暴力は振るわなかった。それが教えに従ったものなのか、ただ傷つけると不味いと思っていたのかは知らない。
代わりにそれは学校の生徒によって行われた。
理由は、やはり奴らにあった。当たり前だろう。神を信じるにしても、宗教に囚われ、それに全てを捧げる親の子など気持ち悪いとしか思わないだろうから。さらに教師もそれを知ってても、もはや黙認していた。俺にとって学校は世間の厳しさや、人間がどれだけ汚いのかを学ぶ場だった。
それは登校中から始まる。バッグを持って登校していると、いきなり横から蹴りが入った。遊びなどではない。情け容赦などない、相手が怪我をするかもしれないということなど気にもしてない、どころかむしろそれを望んですらある、悪意しかない飛び蹴り。
軽く吹っ飛んだ俺は勢いよく、横に流れている川に落ちる。昨日雨が降ったせいか、いつもより水量が多い冬の川は、とても冷たかった。
蹴った本人は何事もなかったかのように通りすぎていった。こっちを見て嘲笑することすらしない。ただごみがあったから蹴り落とした。そんな感覚なのだろう。
俺はいつものことだと思って川から上がり、バッグの中に入った水をだし、学校に向かう。
次は教室だ。俺は扉を開ける前に雑巾をとり、軽く水に濡らして、教室にはいる。そこにはいつも通り教室の後ろに落書きが書かれた机が転がっている。これも毎日の事だ。見ると机の足が歪んでいた。俺は無言で近づいて、雑巾で落書きをけす。何度もこすっているうちに後ろに誰かが立つ気配がした。それは、心底気持ち悪いそうな声とともに、
「何だこのごみくず。ごみが掃除なんかしてんじゃねーよ。まずはてめえから掃除だ。」
と、声をかけてきた。そして、バケツに汲まれた水がぶっかけられる。さらに、
「いちいち雑巾使うなや。汚えのが触ったらごみが増えるだろーが。こうやってふくんだよ。」
そう言って伸びてきたのは、掃除用のビニール手袋を2、3重にした手だ。それは、俺の頭を掴み、顔で床をこすりはじめる。
「あ~、気持ち悪いなあこれ。つーかお前、そんなんで拭いたら余計汚くなるだろー?床ごとはりかえねーともうだめだろこれ。」
「おいおい。そんなんいいからさっさとごみ踏みやろーぜ?」
「やっとか~神谷。それを待ってたんだよー。さっさとやろーぜ?」
「そーだよなあ。んじゃ、いくぞー。」
こいつらは俺のクラス1ーGのやつらだ。
まず、川に蹴りおとしたやつは豊田康介。格闘技を習っているらしい。
そして、先程から俺をごみごみいってくるやつは神谷英斗。このクラスの中心人物だ。こいつが動けばみんなついていく。
神谷に話しかけたのは、野田純平。神谷にいつもくっついている。取り巻きというやつだ。
他のやつは、いや、もういいだろう、きりがない。俺は神谷に倒され、クラスの全員に踏みつけられる。男子だけではない。もちろん女子もだ。
「はいはいー。さっさと死ねーー。(笑)」
「ぐはっ。 がふっ。 がっ。 ぐおあああ。 かはっ。」
「気持ち悪い声出してんじゃねーよ。ごみはごみらしく黙って捨てられときゃいーんだよ。」
「つーかマジで何なの?ここまでして学校来るって。マゾかよ。マジキモい。とっとと死ねよ。」
どれだけ苦しくても、先生がくるまで終わりはしない。所詮その先生も助けたりはしないのだが。
だいたいの人ならば、こういう場合、頼るのは恐らく神だろう。
そう、親も、生徒も、先生も、困った時は神に頼む。人は、神によってその人生を決められているのだという。では、そいつらにごみ扱いされている俺が神に頼っても意味はないだろう。そう。神は俺の敵だ。
だから、いつしか俺は仏に頼るようになった。悪魔でもよかったが、悪魔では助けてくれそうもない。
(仏様。俺を助けてください。この苦しみから解放してください。)
そう、祈って今日も耐える。これが終わっても授業中、休憩中関係なく奴らは俺を苦しめるだろう。だから、その苦しみからの解放を望んだ。
だが、それは叶わず、先生が入ってくる。石橋武。担当は体育だ。
「おーい。遊んでないでさっさと席につけー。」
「はーい。」
神谷が返事をして、踏み絵は終わった。俺は涙で視界がぼやけ、痛みで体がきしむような感覚。さらに頭がくらくらして、なかなか立ち上がれない。
「おい。いつまでそこで寝てんだ!さっさと起き…っ!?なんだ……!?」
いきなり、教室がブレた。いや、空間そのものが軋むような、そんな感覚が襲う。
「……! 伏せろ!」
石橋が叫んだ。地震か?と思ったが、ちがう。そして、ようやく気付いた。涙だでぼやけた視界が、割れていくのだ。いや、これは…、
「空間が…割れていく!?」
呟いた時には、割れた空間に飲み込まれていた。
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