第26話雪のだもん。

お久しぶりです


――――――――――――――――――


「んー、メロンソーダ美味しい!」


大きくて背の高いグラスに満面の笑みを浮かべてる雪が天使のように可愛い。実は天使なんじゃないかまである。全員分の注文したものが来たので話を続行しつつ飲み物を飲み始めたのだが、雪のは食べる系なので美味しそうにアイスを頬張っている。う、うわー、うちの妹可愛すぎるだろ。


「おにいがなんか変なこと考えてる気がする」


「放っておこうねー、雪ちゃん」


ひどい……



「さて、そろそろ買い物に戻ろうか」


全員が飲み物を飲み終えて一息付けたところで、俺はみんなに声をかける。


「そうですね、そろそろ行きましょうか」


「いくー!」


眩しい笑顔を浮かべて雪は、俺に伝票を手渡してきた。うん。どんな時でも可愛くて困っちゃうな。


「みんなは先に出てて。俺は支払いしてくる」


基本的に支払い担当は俺だ。もちろん今現在のこの六人の収入の大部分を握っているのが俺だからという理由もあるが、みんなそんなことはおそらくどうでもいいのだ。そう。支払いするとなると、店員と何かやり取りをしないといけない可能性があるから。やりたくなさすぎだろ……俺もやりたくないよ……


「あ、お、お会計おねがいしますぅ~……」


店内で大きな声なんて出せないので、行ったという証拠が残る程度にそう呟き、店員が気付いてレジに来るまで待つ。ひたすら。きょろきょろしてたら意外と気付いてくれるよ。


「どうぞ〜」


ほらね。ササッと会計を済ませて、店の外に出る。っていないし。まったく、いつも俺が会計してる間に先にどこかに行くんだから……本当に何なんだ。


「おにい、何やってるの?」


「雪?」


きょろきょろと周囲を見回していたら後ろから突然話しかけられ、おれは思わず勢いよく振り返る。え、もしかして雪、俺のためにここに残っていてくれたってこと……? なんて優しいんだ雪〜!!


「おにいが何考えてるのかは知らないけど、みんな今お手洗いにいってるだけだからきっと勘違いだよ。ほら、しづにいもそこにいるでしょ?」


雪が指さした方に目を向ければ、そこにはベンチに座っている雫月の姿が。あまりにも似合いすぎて気づいてなかった。すらりと長い脚を組んでスマホを見つめている雫付きは、それはもう絵になる。女の子からモテるのもよく分かるよ。雫月はハーフだから若干の外国人顔だし、きっとそれも大きい。って言ってるそばから女の人から声かけられてるし……


「げっ、しづにい知らない人に絡まれてる……」


うわー、俺らの中だとまだ軽症だけど雫月も立派な陰キャコミュ障、どうしよう……これ雫月のところに言ったほうが……俺がうだうだ考えている間に、いつの間にか俺の隣から雪が消えていた。え、雪?


「し、しづにい、早く行こうよ〜!」


「雪ちゃん?」


「あれ、妹さん?」


そんな、一瞬の間に雫月のところに……そうか、雪は雫月の妹じゃないけど、全然余裕で妹に見えるもんな。実際お兄ちゃんって慕ってるし。まあ俺のだけどな?


「ねえしづにい、この人たちだれ?」


「ううん、なんでもないんだ。行こうか、ごめんね」


それはそれは可愛い妹(仮)の登場に、お姉さんたちはすごすごとその場を離れていった。知らない人に声かけて帰ってもらうなんて……なんてえらいんだ雪……! 俺が動くよりも早かったなんてめったにない気がする。でも俺が行ったところで一緒にナンパされそうな気もするから、雪が行ってよかったのかも。さすが俺の妹。天才なのかもしれないな。いや、事実天才なんだけど。


「ごめん、助かったよ雪ちゃん」


雫月が安心したようにほっと息をつく。


「ありがとう」


そういって彼は雪に微笑みかけた。こういう事するからすぐさっきみたいなことになるような気がするけど……


「う、ううん、あの人達が今日は雪たちと一緒のしづにいのことどっかに連れてこうとしたんだから雪のだもんって言っただけだしっ……」


うわー、うちの妹天使。


「透、なんでそんな離れたところで変なこと考えてるわけ? 事情知らない人からしたら変質者だけど?」


突然後ろから芽里に話しかけられ、俺は思わずびくりと大きく方を揺らす。う、うわー、まじびっくりした……叫んだらどうするつもりだったんだよ……


「雪が天使だなって思ってただけだろ」


「それを変質者っていうの」


あれー、おかしいな……


「というかどういう状況?雫月なにかあったの?」


雫月が雪の頭を撫でて、俺が何故か遠くから見つめているこの状況。あ、雫月お前ちゃっかり頭なんて撫でてるのか!? 今気づいた!!! 俺はいつも嫌がられるのに!!


「はは、雫月がさっきナンパされてるところを雪が助けたってとこかな……」


「えー、雪ちゃんなんていい子なの〜!?」


あ、芽里まで雪の頭撫でに行ってる!!


「雪!!」


「おにい邪魔」


ので俺も行ったら見事に拒否られた。そんな。


「透お坊ちゃま、一体何を?」


「なんでもない」


「いえ、普通に気になるのですが」


「なんでもない」


なんでもないったらなんでもないっ!!雪に拒否られてやることがなくて悲しくて佇んでるわけじゃないから!!


――――――――――――――――――


長らくお待たせしてすいません、精神面が不安定だったので更新ストップしてましたが本日より再開の予定です。またよろしくお願いいたします。

次の更新予定日は五月二十六日です!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る