第27話おかしいな、これじゃ立場逆t……(((

「さあ、早速新しいキッチン、使わせていただきますね!」


買い物を終えて家に戻ってきて、さくらはうっきうきな様子で食材の入った袋を持ってキッチンに消えていった。楽しそうだなー、そりゃあここのキッチンすごくきれいだし、その気持はよく分かる。


「じゃあその間に俺たちはおけるものだけでもおいていこうか」


俺はとりあえず親たちの荷物を担ぎ上げて、皆にそういった。まあまだ家具は全然置いてないからおけないものも多いだろうけど、服とかはかけられるじゃん? めちゃくちゃ重い自分の親の荷物が詰まったダンボールをまず親たちの部屋に放り込む。さっき行った通りどうせ年に数回も帰ってこないんだからこのままで何ら問題はないでしょ。ここ一年ちょっと帰ってきてないし。


「まったく、今度はいつになったら帰ってくるのかな……」


征太のこともさくらのことも紹介しときたいんだけど。雇用主は俺だからあげないけどな。なん往復もしてやっと俺の親の荷物を運び終えたので、今度は自分の部屋に行けるかと思いきや今度は芽里の親の荷物だ。うちより少ないのが救い。うち、何? 哲学だよ……


「うわ、でもこっちは割れ物がさっきより多いな……」


マリアンヌ母さんの趣味かな、それともマリアンヌ母さんのお母さんとかからの贈り物かな……飾り用のティーカップの量多すぎだろ……


「ダンボール一杯分全部ティーカップってどういうことだよ……」


ほんとに飾ってた? 何個か箱の中にしまいっぱなしのものとかあったよね。


「重いものばっかりで腰痛くなりそうだな……」


「おにい、雪の棚組み立てて〜」


「今行くー!」


遠くの方からそんな雪の声が聞こえてきたので、俺は一旦親たちの部屋の荷物運びを中断して雪の方に向かった。こういうときは頼ってくれるんだよなあ、普段からもっと頼ってくれていいのに。


「おにい早く!」


ごめんて、芽里の親の部屋から雪の部屋まで、遠いんだよ……


「雪〜! 待たせてごめんな〜!」


「いいから早く」


はい。デレってわけでわなかったか。でもツンも可愛いからオールオッケー! 雪は今日もかわいいな! ……雪、そんな目しないで……


「はい、材料かして」


運ぶために一度解体したパーツを受け取って、俺は棚を組み立て始める。隣の部屋から同じような音が聞こえるから、芽里も雫月となにか組み立て中らしい。


「ええ……雫月、それこっちのパーツだから!」


違うな、これは雫月のほうが手伝ってもらってるんだな。雫月お前お兄ちゃんだよな???


「雪、荷ほどきどれぐらい進んだんだ?」


部屋をぐるっと見回して、雪に尋ねる。まだあんまりかな……


「服はハンガーある分は片付いたけど、ハンガーに掛けない分はしまうとこないからまだ」


「じゃあ服入れられるちっちゃい引き出し置こうか」


クローゼットは服をかければ下に空間ができるから結構便利だよな。広いから秘密基地も作れそうだ。


「おにい、秘密基地は作らなくていいから」


なっ、思考が読まれている……だと……?


「おにいの部屋のウォークインクローゼットに秘密基地作らないでよね」


「あそこはもう秘密基地みたいだしいいだろ」


「もうダメだ……」


かっこいいだろ、いいだろー。そういうの憧れるよなー。


「ほら、できたぞ」


雪の店の作りは簡単だから、思ったよりも早く組み立て上がった。いいね、これ。


「ありがと。じゃあねおにい」


え!? いまありがとって言ってくれた!? なんて可愛いんだ俺のいもうt


「はやく出てってくんない?」


あ追い出された……くそ、雪はツンとデレの使い分けが流石はプロだな……とそこへ、隣の部屋から呼び声が聞こえた。


「ちょっと透ー、手伝ってー!」


「なにー?」


部屋の中に入ると、困ったように笑っている雫月と、呆れたように彼を見つめている芽里。そして散らばっているなにかのパーツ。うわ、展開が読めた。


「これ組み立てて?」


さっきから何一つ進んでないわこれ……

俺はすでに雪の棚を組み立て終わったのに、一体何をしていたんだい? 特に雫月。


「どうすればいいのか全然わかんなくてさ……」


「雫月の棚の構造なんて覚えてないよ〜!!」


しかたない……俺がやってやろう……



「ほら、これで元の形に戻ったんじゃない?」


「おおー、ありがとう」


雫月に言われてもな……やっぱり雪のありがとうこそ至高なのであって……


「ついでにじゃあその棚僕の部屋まで運ぶの手伝ってくれない?」


「はあん!?」


なぜ俺がそんなことまで。というか雫月の棚なら芽里の部屋じゃなくて雫月の部屋でやれよ……


「えー、一人じゃ無理だよ」


「ぐっ、仕方ないな……」


まあ確かに明らかに一人だと無理がある大きさと重さだし、運んであげるか……大サービスで手伝ってあげることにした俺のことを誰か褒めてくれてもいいと思うんだ。うん。


「なんで芽里の方に助けを求めにいったんだよ……」


「部屋が隣だったから」


どんな理由だよ。


「透お坊ちゃま! ちょっと来ていただいても!?」


あれ、この家の執事って実は俺だったのかな……


――――――――――――――――――


今んとこ一家の主だから仕方がないね。


次の更新予定日は六月十六日です!

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