第7話やっぱり征太は腹黒い
「うわああああん、透、もう嫌だああああ!」
「よりによって
学校帰りの車の中。初姫が転校してきたという事実を信じたくない人が約三名いた。芽里と俺と、雫月だ。
「おにい、おつかれ。めりねえもしづにいも大変だね。かっこいいし」
「雪、俺だけ対応違う気がするんだけど?」
でもそこが可愛いんだよなあ。
「芽里お嬢様、初姫さんになにかされたんですか?」
多分名前などは知っていると思うがそのほかを知らないであろうさくらが芽里に話しかける。芽里がむっとした様子で答えた。
「あの目は、あの行動は、絶対に私を狙ってる。お金をばらまけば私と付き合えるって思ってる」
「お金……この芽里お嬢様にお金……? お金なんてもらったところでですよね……?」
さくらも言うようになったなあ。メイドになりたての頃はあれだけお金に対して敏感だったのに。まさか本人も“お金なんてもらったところで”なんて言うようになるとは思ってもみなかっただろう。
「透、助けてよ」
「俺学校では陰キャ女子扱いなんだから無理に決まってんだろ!」
再び芽里が突っ伏す。いや俺も助けたいんだよ? 助けたい気持ちはやまやまなんだけどさ、いきなりクラスの存在を知られてるかすら分からない陰キャ女子がクラスのアイドルの芽里を助に行くなんて不可能だろ。誰だよお前みたいになるし。
「透、いつも陰キャなんだから陰キャ扱いは妥当でしょ!」
「芽里もだろ!」
ひとつ言っておくがこれは喧嘩ではない。本気じゃなくて冗談だ。四人でひとしきり笑った後、芽里は真剣な顔つきになった。
「初姫嬢どうしよう、どうしたら転校してくれるかな? 学校長にお金を握らせる?」
「落ち着け芽里、発想がおかしくなってるぞ」
それは流石に動転しすぎだろ。初姫とやってる事同じだしなんで転校してくれるが前提なんだよ! 俺もそれがいいと思う!
「そうですね、思い切り相手をふってやればいいのでは? 初姫とかいう人のことは良く知りませんが容姿なんかを可愛いと思わないとか言って最後に嫌いだとでも言えばもう二度と近づいてくることはないでしょう」
とてつもなくいい笑顔で征太が言った。相手は仮にも金持ちの社長令嬢なのに分かっててそこまで言えるなんて勇気あるね。ここにいないから良いんだけどさ。
「そうかなあ……でも初姫嬢、確かに美人ではあるんだよね。目障りなだけで」
「そうならなおさらですよ、芽里お嬢様。いきなりいうのは面白くないので毎日ちょとずつ言っていけばどうでしょう。いつか必ず転校していくはずです」
やけに現実味があるな。征太お前、やったことあるのか……?
「お、お坊ちゃま、やったことならありますからご安心なさってください。最初のうちは『あなたのためにいつもよりおしゃれしてきた』だのなんだの言ってまとわりついてきますけど最後徹底的につぶしたらもうついてくることもなくなりました」
なんだこいつやばいな。俺ほんとにこんな奴執事にしてて大丈夫かな。
「ほんとに? 明日から試してみよっと」
「ほんとにやるのか……」
「やらなきゃ邪魔で邪魔で仕方ないでしょ。女ってばれたりアイドルだってばれたらそっちの方が嫌だ」
確かにそれはだめだな。芽里はもし万が一ばれても何とかなる可能性が僅かにあるけど芋づる式に俺の方までばれたら俺もうこの世にいられなくなるもん。俺は芽里の手をがしっと握った。雪と雫月とさくらも芽里の手を握る。征太もあいている方の手を重ねた。
「頑張ろうね」
「頑張ろうな」
車の中に重い声が響く。俺はこんな風に円陣を組むみたいになろうとは思ってなかったし声を張ったところで全く意味がないのでこれでいいんだ。
「めりねえ大好きだよ、あんな嫌味な社長令嬢になんて負けないでね」
「もちろんだよ雪ちゃん……!」
ぎゅっと雪を抱きしめた芽里は小さな声でそう言った。もうすぐ家につく。にっこりとさくらが笑った。
「せっかくライブのない日ですし、皆さんでごはん作りましょうね。買い物は済ませてありますから!」
「作るー!」
「もちろんー!」
俺の家は別に豪邸でもない一軒家だが、やっぱり俺はこういう暮らしが好きだ。別に住む家は関係ないけど。
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