第9話 魔法少女ブリキュア その1

 ――ヒラガナ町


 空から一筋の光が漏れる。

 その光から重い音が鳴り響く。


 そこに立っていたのは一人の男。


 男の名前は、ブリ男。

 魔界ブリタニ国のサラリーマンです。

 ブリ男は、静かに町を眺めます。


「何と言うか……

 賑やかな町ですねぇー」


 ブリ男は、そう言ってメガネを上にあげました。


「おい。

 おっさん!」


 そんなブリ男にひとりの若い男が声をかけました。

 ブリ男は、自分は自分をおっさんと思っていないので無視しました。


「おい聞いてんのか?

 おっさん!」


 若い男は、ブリ男の肩を掴みます。


「おっさんってもしかして、僕のことですか?」


 ブリ男が、そう言って若い男の腕をつかみます。


「お前以外に――」


 若い男が、そこまで言ったとき悲鳴が響き渡ります。

 爆発音と共に怪人が現れたのです。

 怪人は、ブリ男の方を見るとニヤリと笑い攻撃を仕掛けます。

 ブリ男は、その攻撃を軽やかに避けます。

 悲鳴をあげて若い男は、そのまま逃げてしまいました。

 でも逃げたのは、若い男だけではありません。

 その場にいた人たち全てが逃げたのです。

 ただひとり、ただひとり、ただひとりの少女を除いて……

 少女は、震えながらもホウキを持って構えます。


「またお前か……」


 怪人は、そう言って少女の方に一歩、また一歩と近づきます。


「私は、逃げない……

 貴方のような人からみんなを護りたいから!」


 少女の体が震えています。


「今日のオイラは、苛立っているんだ。

 今日こそは殺しちゃおうかなぁー」


 怪人が、ケラケラと嬉しそうに笑います。


「私を殺したら、もうほかの人を傷つけませんか?」


 少女がそう言うと怪人が言いました。


「はぁ?

 何言っているんだ?

 お前ひとり殺したところで気が済むかよ!

 オイラは、もう何人も殺しているんだ。

 お前ひとり殺したところでそんなのノーカンさ!」


 怪人が、そう言って銃口を少女に向けます。

 少女は、死を覚悟しました。


「ところでお嬢さん。

 お名前は?」


 少女の前にブリ男が立ちます。


「え?」


 少女は、目を丸くさせて驚きます。


「名前は?」


 ブリ男が、再び尋ねます。


「伊藤 早良さわら……」


「早良さんですね。

 貴方、魔法少女になりませんか?」


「貴方はなんなんですか?

 悪者ですか?」


「なんだかんだと聞かれたら?

 答えてあげるが世の情け、世界の破滅をふせぐため世界の平和を守るため愛と真実の悪を貫く魔界の果てからこんばんは。

 私、魔界ブリタニ王国営業部平社員のブリ男と申します」


 ブリ男は、そう言って白い歯を見せて笑いました。

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