第3話 犬もあるけば鬼になる

 オークの村に現れたのは小さな影。

 犬です。

 でも、普通の犬ではありません。

 知識を持った犬。

 名前はアースベルガー


「あー犬だ!」


 オークの少女がアースベルガーに近づきます。


「我は犬だ」


 アースベルガーはため息を吐きます。


「喋る犬?」


「主は雌か?」


「私?私は女の子だよ?」


 アースベルガーは笑います。


「ならば……」


 アースベルガーがくしゃみをします。

 するとオークの少女の服が消えます。


「え?」


 オークの少女は戸惑います。


「ハーレムに入れてやろう。

 我が力は雌と交配をするたびに力を得る。

 人間、エルフ、魔族、そして神族。

 喜べ、すべての雌は我に侵されるために存在している」


 少女は気づきます。

 このアースベルガーの恐怖に……


「誰か!助けて!」


「誰も来ぬ。

 今この空間は我とペットだけが存在できる」


「私はペットじゃない……」


 少女は目に涙を浮かべます。


「これからなるのだよ。

 我のペットにな!」


 アースベルガーの笑みに少女は恐怖しました。

 震えることしかできない自分。

 舌を噛んで死のう。

 そう思ったときです。


「犬のペットになるってなんか笑えるね」


 アースベルガーは、その声の方を見て驚きます。


「誰だ?どうやってここにきた?」


 猫が一匹そこにいます。


「にゃーん」


「誤魔化すな!なぜここに猫がいる?」


 すると猫はいいます。


「ノリが悪いね」


「もう一度聞く。

 返答次第では殺す」


 すると猫は人間の小柄な少年へと姿を変えます。

 そしてメガネをクイッと上にあげて言いました。


「僕かい?

 僕は13(サーティーン)。

 それ以上でもそれ以下でもないよ」


「ただの子供か?」


「まぁ、子供といえば子供だね。

 殺し屋だけど」


「殺し屋?我を殺しに来たのか?笑止!」


「犬を殺してもなんの特もないね」


「見逃してやる。この場から消えろ」


「そうだね」


 13は小さく頷きました。

 そして少女と目が合います。


「助けて」


「いいよ?」


 13は布をどこからともなく召喚するとそれを少女の体に掛けます。


 アースベルガーは機嫌が悪そうにいいます。


「主は我を愚弄しているのか?」


「ばいばーい」


 13はそう言い残すと少女とともに姿を消します。

 少女は目眩を感じます。

 ぐらっと揺れます。


「ミカン!」


 少女は自分の名前を呼ばれたことにより我に返ります。


「お前、なんで裸なんだ?」


 ここはオークの村。

 名前を呼んだのはオークのヤス。


「お兄ちゃん!」


 安心したのかミカンは涙をボロボロとこぼします。


「この人に助けてもらったの」


 ミカンは13の服を掴んで言います。


「君は?」


 ヒラノが警戒心を固めたまま尋ねます。


「僕は13。

 アルカディアの左手の契約者だよ」


「ってことは君もヒーラー?」


 ヒラノの言葉に13は首を横に振ります。


「僕は殺し屋だよ。

 まだ殺してないけど」


「もしかして僕を殺しに来た暗殺者?」


 ヒラノがそういうと13がため息を付きます。


「どうやったら君は死ぬの?

 意地悪なことを言うんだね」


「いや、死ぬときは死ぬと思うよ?」


「それもそうだね」


 13はヒラノの言葉に納得しました。



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