第2話 避ける回復術師

「ヒラノ……?」


 オークが首を傾げます。


「殺られる前にやる!」


 もうひとりのオークが剣を抜きます。

 でも、それよりもヒラノは早く動きました。


「知ってる?」


「知らん!死ね!」


 オークはヒラノの首を剣で斬りました。


「痛いね」


 ヒラノは小さく笑います。


「痛いで済むのか?」


「経験してみる?」


「や、やめろ!」


 オークの首に斬撃が走ります。


「ぐああああ」


「死なないね。流石はオークだね」


 ヒラノの目は優しく透き通っていました。


「見逃してくれ」


 もうひとりのオークがヒラノに命乞いをします。


「いいよ」


「いいのか?」


 オークの目に希望が宿ります。


「うん、みんな死にたくないからね」


「本当か?」


「その代わり君たちは僕の仲間になってもらうよ」


「仲間?」


「でもそれは……」


 オークが怯えた目でヒラノの方を見ます。


「君たちテオスの部下だよね?

 主従契約を強制的にさせられている。

 違うかい?」


「ああ、そうだ」


「じゃ、それは解除したので僕の仲間になってよ」


 するとライセンが言います。


「主従契約を解除するのには高度な魔法が……」


「え?パシップ解除並みじゃん」


「いやいやパシップ解除自体難しくないかい?」


 マーガレットも驚きます。


「僕はヒラノだからね、そんなの朝飯前さ」


 ヒラノは自信満々に言います。


「いや、意味がわからないよ」


「で、どうする?僕の仲間になれるかい?」


「なりたいのは山々だが……

 いいのか?俺らはオークなんだぞ?」


「これが僕のやり方だよ」


 ヒラノがそうとオークたちは跪きました。


「俺は貴方に忠誠を誓う」


「うん」


 ヒラノが優しく微笑みます。


「だが条件がある。

 俺たちの仲間も助けて欲しい」


「ん?何言ってるの?」


 ヒラノが首を傾げます。


「仲間の呪いを……」


「そんなの前提条件に決まってるじゃないか」


「え?」


 オークの目に涙が浮かびます。


「君たちみんな助けて仲間を増やす。

 それが僕のやり方さ」


「いいのか?」


 オークが涙を拭います。


「名前を聞いていいかい?」


「俺の名前はヤスで、コイツが……」


「ヒデだ」


「ヤスさんとヒデさんだね。

 で、君たちは?」


 ヒラノはマーガレットとライセンから名前を聞くと頷きました。


「アンタは何者なんだ?」


 村人の男が恐る恐る訪ねます。


「ヒラノだよ」


「いや、名前はわかるけど」


「僕はヒラノ。ヒーラーのヒラノ。

 避けられるヒーラーだよ」


 その言葉に興味を持った子供が訪ねます。


「ヒーラーってなぁに?」


「傷を癒やす魔法が得意な人のことだよ」


「すごい!」


 子供の目が輝きます。


「そんなことはないよ。

 さて、ヒデさんヤスさん。

 君たちの村に案内して、村ごとテオスに消される前に」


「あ、ああ……」


「ちょっとまってなにかお礼を……」


 マーガレットがモジモジしながらいいます。


「じゃ、ご飯でも作ってよ」


「え?」


 ライセンがヒラノの方を不思議そうに見ます。


「お腹空いているんだ。

 だから……」


 するとライセンが言います。


「私料亭の子だから覚悟してね」


「うん」


「馬車を用意する」


 村人の一人がそう言いました。


「いいんですか?」


 ヒラノがそういうと村人は言います。


「俺らからのお礼だ」


 するとすぐに馬車が来ます。


「宿屋のカズノコだ。

 この馬を使ってくれ」


「うん」


 カズノコはそういって馬車を降りヤスが馬に乗りました。

 荷台にヒラノとヒデが乗ります。


「じゃ、おふたりさん暫くこの村を守ってね」


 ヒラノはそういって手を振り馬車は走り出しました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る