第6話
「レナ!チームを招集だ。人魚の雫を探しに行くぞ」
「待て、ケイン。落ち着け。まずは情報だ」
うっ!・・・流石は機械。論理的で冷静だな。
「闇雲に探して、見つかるわけないでしょ。おねぇさんと、良いことしてから探しましょう」
こっちの機械は、ダメっぽいな。
「そうですわね、まずは情報ですわ。王宮書庫の文献を、機械族の皆さんと、レナさんとセレスさんで探してもらいますわ」
「機械族なら、私たちより探すのが早いぞ」
「・・・俺は何を?」
「今は休む」
ターナはポンポン治ったのか?
「私は~ピーちゃんに~聞いてみるよ~」
超能力か!こんな時は頼りになるかもな。
「私は占ってみるぞ。実は占いは得意だぞ」
藁にもすがる思いだ。頼む。
王宮のメイドや衛兵から、機械族が集められた。
大量の文献が眠る書庫で、人魚族と人魚の雫に関する情報を探す。
マオは、家に戻りピーちゃんに協力してもらう。
アリスは、部屋で占いの儀式を始めた。
俺はアリスの横で、横たわるターナのポンポンを撫でていた。
まだ腹が痛いそうだ。
「見えるぞ、見えるぞ!段々見えてきたぞ」
頭に鉢巻を巻き、護摩を焚き、しゃくを振り回す。
「南の方角だぞ!金運、良縁、運気上昇だぞ」
「うん、お前は飯でも作れ」
マオが飛び込んできた。
「ピーちゃんが来たよ~」
「お待たせ。で?何を占うの?」
「マオ?なにを、どう伝えた?」
「成程、人魚族ね。私の能力で、人の考えてることは分かるけど、知らないことまでは、読み取れないわ」
流石の、くーちゃんでも無理は無理だよな。
おっと、ピーちゃんの間違えだ。
「ダメ・・痛い」
ターナが苦しみだした。
「どうした!?痛むのか?」
「・・村に蛙。・・これ、エルフ特融の痛み。村じゃないと直らない」
不味い。ターナがセリフに句読点を入れた。
重症だ!!!
「変換もおかしいぞ。ヤバい状態だぞ。」
「言葉にしないで。私が考えを読み取るから」
ピーは、負担のかからないよう、ターナの考えを読んでくれるという。
「こんな時に、迷惑をかけらえないから、一人で帰る・・ですって」
なにを言うんだ!?
こんな状態で帰れるはずがない。立ち上がることもできないじゃないか。
「馬が居るから大丈夫。・・ですって」
「ダメだ!俺がついて行く」
「ターナの村は、馬でも2日掛かるぞ。私も行くぞ!」
「アリスはよせ。体に負担がかかる」
「ケイン、不味いわ。意識が途切れ途切れよ」
ピーは両羽をバタバタさせて、緊急事態であることを告げる。
「エルフの村は隠れ里だぞ。場所は一部の王族とターナしか知らないぞ。私が行かないと、迷子だぞ」
「・・・そうか、分かった。頼む」
「私も~行きたいけど~足手まといになるよね~」
「大丈夫よマオ。私が乗せて行ってあげる」
よし、マオはピーに任せる。
「ケインは、ママたちに言って来るぞ。私は、馬の用意をしてるぞ。正面玄関で落ち合うぞ」
わかった。
俺は、アイリス達が居る書庫に向かった。
「と、言う訳だ。ターナの村に行って来る」
「分かりましたわ。ターナさんの事、お願いしますわ」
「セレスを護衛に付けよう」
「いや、護衛はいらん。少しでも早く文献の方を」
「と、言うか、あいつはダメだ。男性の医学書部分しか見ない。エロい単語を見つけると、キャーキャー騒ぎ出し、作業にならん」
「分かった、連れて行こう。そしてどこかに捨ててくる」
「ああ、頼んだ。電源さえ切れば産業廃棄物扱いになる」
俺は嫌がるセレスを連れて、正面玄関に行く。
「アリス!」
「ドンピシャだぞ。私も今、馬を連れて来たところだぞ」
!!!何だ!?この馬は?
「黒王号だぞ。ターナの馬だぞ」
普通の馬の2倍、いや3倍はある。どこかで見たことのある馬だ。
「黒王号!俺たちを乗せろ!」
くそ!今、プイっとした!
「急ぐんだ!乗せろ!お前の主人が苦しんでいるんだぞ!」
黒王号は、膝を折り、背に乗る様に促した。
「分かってくれたぞ。私から乗るぞ。ケインは、横からターナを乗せてくれだぞ」
アリスが先に黒王号に跨り、俺がターナをアリスの前に乗せる。
アリスがターナを抱きながら手綱を取る。
「よし、俺も乗るぞ」
俺は跨った。 ビーーーーーーー!!!!
「重量オーバーだぞ。ケインが重すぎるぞ」
エレベーターか!
「ケインは、私に乗ると良いわ」
セレスに、おんぶしてもらった。
マオはダチョウほどに大きくなった、ピーに跨る。
サイズを変えられるとは、さすがは超能力鳥だ。
「みんな!出発だぞ!」
ピーは飛ぶのかと思ったが、走っている。
それでも早い。
これだけ早く走ると、振動がアリスの負担にならないか心配だ。
「大丈夫よ。黒王号は馬の姿だけど妖精よ。よく見てみなさい」
!?地面を蹴っていない。確かに脚は動いている。宙を駆けているのか?
「大丈夫だぞ!振動はまるでないぞ!」
「あたりめぇ~だ。俺様が姉さんに負担なんか掛けるかよ」
黒王号が喋っただと!
「黒王号は喋るぞ。イチゴ見てないかだぞ?」
なんの話だ?世紀末を迎えなかった北斗など、俺は知らん。
「ケイン、人の心配している時かしらね~」
なに?
俺の尻にあるセレスの手に力が入り、俺の股間を背中に押し当てた。
おんぶされている俺は、抵抗が出来ない。
!!!グハ!振動が!
「私の背中バイブレーション機能で、極楽浄土よ」
グハァ!気持ちが良い~このままではヤバい。
反撃だ。
どこか開くハッチは?中を攻めれば。・・・・ない!
ならば髪の毛だ!むしり取ってやる。
「ちょっと!ダメよ。引っ張らないで!抜いちゃだめよ。私は生えてこないんだから」
天辺にミステリーサークルを作ってやる!
「分かっわよ。降参!降参よ!」
セレスの肩の関節が、あらぬ方に向く。
肩から手が、後ろ前、逆になる。
俺はセレスの背中で、お姫様抱っこの状態だ。
きもい!
随分、走った。黒王号の速さは、並ではない。
人を乗せて、それについて行くセレスやピーも凄い。
アリスが大きな声を出した。
「見えてきたぞ!エルフの村だぞ。ターナしっかりするぞ」
ターナは額に汗をかき、うつむいたままだ。
「誰か!ターナを!ターナをだぞ!」
アリスが黒王号の上で叫ぶ。
数人の美しいエルフが駆け寄ってくる。
その中の1人が「私はターナの母です」とアリスに告げた。
「村に帰れば、治ると言っていたぞ。ターナは大丈夫かだぞ?」
「はい。これはエルフ特有の病気です。聖露丸を飲ませれば、すぐに良くなるでしょう」
マツキヨでも、売ってそうな薬だ。
ターナは、数人のエルフに抱きかかえられ、屋敷に連れられた。
俺達は、少女のエルフに、別の屋敷へと案内される。
お茶と羊羹(厚切り)を出すと、少女のエルフは、深々と礼をして部屋を出た。
見た限り、ターナの母を含め、大人のエルフは5人だけだ。
数十人の少女のエルフ。ターナと同じぐらいの年だ。
程なくして、ターナの母が入ってきた。
「この度は、娘がご迷惑をおかけしました」
深く頭を下げた謝罪。
「迷惑など掛かりません。それよりターナは?」
「はい。薬の効果が表れ、今は落ち着き眠っています」
「エルフ特有の病気かだぞ?突然起こるのかだぞ?」
「・・・それは・・。多分もう2度と無いと・・・」
変な歯切れだ。
「それでは、たいしたお持て成しも出来ませんが、ゆっくり休んでください」
そそくさに戻って行った。
「なんか変だよね~」
「ええ、今の態度は、明らかにおかしいわ」
マオとセレスも同じ印象だった。
「何かある気がするぞ」
ああ。俺もだ。
夕暮れ時を迎え、辺りが赤く染まりだした。
俺は、アリスと屋敷の外に出た。
2人の少女エルフが話しかけてきた。
「勇者様?」
「ああ、勇者のケインだ。よろしくな」
「ターナ様の、昇華の儀式に来られたんですね?」
「相手はケイン様?」
「昇華の儀式?、いや、体調を壊したので連れて来ただけだ」
慌てた様子の大人のエルフが、少女のエルフの手を引き、強引に連れて行く。
俺達に礼はしたが、今のも明らかにおかしな行動だ。
「私たち、避けられてるかだぞ?」
「いや、違うな。おそらく少女の言っていた、昇華の儀式の方だろう」
「昇華の儀式って・・なんだぞ?」
「分からないが、聞けばいい」
「明らかに避けてる相手に、踏み込むのかだぞ?」
「何か悪いことをやったわけではない。相手が勝手に避けてるだけだ。俺たちが気にすることではない」
「ケイン、そういうところ強いぞ」
みんなで、ターナの休んでいる屋敷に向かった。
「ああ・・勇者様、皆さま・・ターナ様はまだ休んで・・」
「寝顔の一つも見て、安心したいんだ」
玄関で対応に出てきたのは、母親ではなかった。
「おねぇさんが安心して寝れるには、ターナの無事なところを見る事よ」
ウぁ、セレスが真面ことを言った。
「そだね~寝顔見たいよね~」
でた、そだね~マオがスキップに指示を出した。
「それとも、会えない理由でもあるのかだぞ?」
アリスが畳みかける。
「会えない理由だなんて・・・」
「そうか、困らせてしまったか。仕方ない、みんな戻るか。で、、昇華の儀式ってなんだ?」
一瞬見せた安堵の表情が固まる。幾つかのキーワードがあった。
「昇華」と言う名称。
「俺が相手」
「大人の少ないさ」
「もう2度とない」
多分間違いない。俺の予想では・・昇華とは・・。
「大人に慣れなくても良いのか?」
カマをかけた。
「な、なんで!?なんでそれを・・・」
ビンゴだ。
奥からターナの母親が出てきた。
「隠すつもりではなかったのですが、ターナがどうしてもと言うので。どうぞ、皆さん、こちらへ」
案内された部屋に、ターナはいた。
和服、帯も着物も全て白。
和布団に2つの枕。
「ターナ!なんで黙ってたかだぞ!」
「エルフ、3回大人になるチャンスがある。今回で3回目。ここを凌げば、私は今の姿のままでいられる」
「違うぞ。それは違うぞ。私に気を使ったぞ!プリンセスに気を使ったんだぞ!」
アリスの怒り。だが容姿に変化はない。
この怒りは友を想う怒り。負の感情ではない。
「ケイン プリンセスアリスの憧れ。今旦那。無理」
「何が無理だぞ!みんなの前では、私はアリスだぞ。プリンセスではない只のアリスだぞ!」
「私も~アリスの怒る気持ちわかるよね~」
マオが珍しく、はっきり言った。
元の大きさに戻って、肩に乗るピーがマオに頬刷りをする。
お?
アリスが俺に手を引き、ドスドスと音を立てて、ターナに近づく。
「ケイン、ターナを昇華させるぞ。これは妻のお願いだぞ」
そう言うと、俺をターナの座る布団に投げ込む。
「アリス」
「長い付き合いだぞ。だから分かっているはずだぞ。私がアリスだと分かっているはずだぞ」
アリス、怒ると怖ぇぇぇ。
「ごめん」
「もういいぞ。ケインに優しくしてもらうぞ」
周りのエルフは、唖然としたままだ。
「ケインを一晩貸すだけだぞ。問題ないいぞ」
エルフはアリスの言葉に拝みだした。
「出てけ」
「見たいぞ。昇華の儀だぞ」
「ダメだ。出てけ」
「神聖な~儀式だよ~」
「でも、ダメだ。出てけ」
「皆さん、仕方ないわ、男性もデリケートなのよ。 わかってあげましょう」
セレスが言うが・・。
「セレス・・・片方の目玉はどうした?」
髪で左側の目を隠していたが、眼球が無いのは見てわかる。
「あら、いやだ。また落ちちゃったのかな?どこに行ったんでしょう~私のカメラアイちゃん」
「これか?」
「あら、ケイン。それそれ。返していただ…」
俺は、無言で握りつぶした。
「私の目玉!」
「ケインが怖いぞ」
「そだね~ココは~出て行った方がいいよね~」
「ターナ頑張るぞ」
2人は、後ずさりしながら振り向き、ドアに向かう。
良し、これで邪魔者はいなくなった。
昇華の儀式とは、思い人との愛の形。
日は沈み、月明かりがターナの影を作る。
俺はターナと昇華の儀式に臨む。
「ん・・・・ん~~朝か・・・」
!!誰だ!?俺の横で寝てるのは、ターナじゃない!
そんな馬鹿な?俺は確かに・・・・
いやいや、落ち着け俺。
確かターナと昇華の儀式をしてだ・・。
「おはようだぞケイン!たっぷり楽しんだかだぞ?」
「おは~~~だよね~」
ぐはぁ!!!
こんな所をアリスに見られたら・・・キルされる。
不味い!勇者最大の危機だ。
「あれ~~~」
マオに気づかれた!
「美人に成ったぞ。ターナが見違えるようだぞ」
え?
「凄い美人だね~」
俺の横で眠る美女が、言葉を発する。
「後5分 まだ寝る」
あ~~ターナだ。
目を覚ましたターナ。
5頭身少女が、8頭身美人に成っていた。
胸も大きいい。顔つきも美しい。
いや、美しすぎる。拝みたい衝動にかられだした。
ティナクラスの美しさだ。
「ターナ!」
おかぁさんが入ってると、両手を口に当て、声も出ない。
「おかぁさん、私、こんな綺麗になったよ」
全裸で立つターナ。
部屋の中に差し込む光の中、まさに女神の美しさだった。
立つことが出来ず、膝と手を使い、這いずるように俺の所に来た、ターナのお母は、俺の手を取り、涙を流しながら礼を言った。
続々と部屋にエルフたちが来る。
大人のエルフ、少女のエルフ。
ターナの周りに集まり祝福の言葉をかけていた。
6人目の大人のエルフ。
「私はミラ。エルフ族の族長です。見なさい。ターナの周りに精霊たちが、あんなにも」
綺麗なエルフだが、ターナには及ばない。
「エルフの力は美しさ。ターナの美しさは歴代断トツです。その力は計りしれないでしょう」
「そんなになのか?」
「そう。この力、ケインに貰った」
ターナは、俺の横に立つ。
「エルフの強さは、美しさ。しかし、その美しさは、昇華の儀での、男性の強さです」
ミラは、ターナの前で頬をなでながら、優し眼でターナを見つめていた。
「ケインの強さをもらった」
ターナは俺に抱き着くと
「ケインから貰った美しさ、私は一生の誇りにする。ありがとう」
離れ際のターナの顔は、悲しげだった。
そうか、ターナとのHは、これっきりだな。
大宴会が開催された。
大規模だ。近隣の村や、集落から大勢の人が、ターナを祝福に来た。
「凄い人だぞ」
「ああ、年末のアメ横みたいだ」
お社風の建屋の中に、一人鎮座するターナ。
参列客は、その美しさに驚愕し、手を合わせ拝んでいる。
「新族長、ターナ様のお言葉です」
司会が伝えると参列者は平伏す。
そう、ターナは族長になったのだ。
「皆の者!よく聞け!賽銭に銭はいらぬ。札を置いていけ」
賽銭って、もう神のなった気でいる。
「ケインいいかしら?」
恐る恐るセレスが手を上げた。
目玉を握りつぶした以来、俺を恐れている。
「いいが、エロ系を口にしたら・・分かってるな?」
「ひっ!」
目を押さえ後ずさりする。しっかりトラウマが植え付けられたようだ。
「これだけ色々な種族や人たちが居るのよ。人魚族について、知ってる人がいるかもしれないわ」
「!!!!」
「そうだぞ!ターナに聞いてもらうぞ」
「エロ以外にも知恵が回るとは思わなかった。ナイスアイディアだセレス」
俺はターナの母親に、その旨を伝えると、すぐにターナに話してくれた。
「皆に問う!人魚族、知るものは前にでよ!」
ターナは、すぐさま俺たちの策を実行してくれた。
一瞬のざわつきの後、手が上がる。!!知ってるやつがいる!
そして・・・
「わしらが人魚族じゃ」
人込みを割って現れたのは「河童」だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます