第四話

「わたしも学生時代は優等生でした 中学は公立でしたが 勉強そのものがすきなので 自然と進学校の○○高校に進学できたんです」

「はあ」

「当時 中学時代の同級生で中卒としてはたらいていた彼女がいました わたしは彼女と結婚するために 国立大學をめざして勉強していました 軈て 援助交際していた彼女は どこの親爺のたねだかわからない子供を孕みます わたしは益益 彼女と子供のために頑張らなけりゃいけないとおもうようになりました ですが 少少 気のあらいところがあったわたしは 口諠譁をしていたときに担任教師を打擲してしまい 退学となったのです」

「へえ」

「わたしは身重の彼女とともにアパートで暮らすようになり まず 職安にいきました が 矢張り彼女と子供をやしなえるだけの給料の職はありません 軈て 彼女は無事 女の子を出産しました わたしたちは必死にそだててゆきましたよ でも わたしの十七歳の誕生日に 彼女は娘をつれて行方不明になったんです 余談ですが わたしは彼女と一度もセックスしていませんでした」

「はい」

「わたしは彼女を愛していた 無論 彼女をさがしまわりました でも 見付からずに一年が過ぎたのです ところが わたしの十八歳の誕生日に 彼女と娘は帰ってきました そこで わたしは彼女とセックスしました 童貞をすてたんです 翌日 彼女はまた行方不明になりました 以後 一度も逢っていません」

「はあ」

「自殺しようとおもいました」

「え」

「人生に絶望したわたしも あなたとおなじように ある組の事務所におしかけて 拳銃を売ってほしいと希望しました 『そこまでたどりついた』のです ですが あなたとおなじ理由で売ってもらえなかった だから わたしはあなたの人生が他人事だとおもえないのです」

「なるほど」

「無論 あなたは八九三ではない が わたしは八九三になった」

「そうですよね」

「そこの組の若頭がわたしを『心配』してくれたんです わたしも最初は胡散臭いとおもいました わたしを籠絡してちんぴらにでもしようというのだと でも わたしはそこの組の兄貴にかわいがられて舎弟となり 漸漸 満足に糊口をしのげるようになったんです 犯罪者ですけどね」

「はあ」

「それでも ときおり すさまじい自殺願望が頭顱をもたげてきました 愛するひとと一緒にいられないからです」

「はあ」


――つづく

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