第13話 貸し出し。

「ねえ、注意点は何?」

リーンが注意点について聞いてきた。

正直にトキタマがはぐらかしている事を告げるとナックが心配してくれてトキタマを睨んでいる。


「僕は嘘をついていません」

トキタマが言うがやはりどうにも白々しい。


「それは明日以降おいおい色んな事を試してみるよ。折角のご馳走が冷めちゃうから食べよう!」

僕はこの話を切り上げて3人の食事を楽しんだ。


食後、そろそろいい加減夜も更けたので村長が一言締めて終わるだろう。

そう思っていると横に居たリーンとナックが何かを騒いでいる。


「どうしたの?」


「いや、リーンのアーティファクトで俺好みのナイフが出せないかと思って持たせてもらったんだよ」

「ナックが勝手に取ったんでしょ。私は使っていいなんて言ってない」


「そうしたらさ、持つことは出来たんだけど、使おうとすると静電気の強いような衝撃が手に走ってアーティファクトを放しちゃったんだよ」

「もう、落とすんて酷い。傷つけないでよね」

リーンが珍しく目に見えて怒っている。


「それは仕方がないんじゃないかな?アーティファクトは授かりものだから持てないんじゃない?」

「あ!キョロならS級だから持てたりして?リーン、もう一回、もう一回だけ、キョロに使って貰おうぜ!」


「ナックのアーティファクトでもいいじゃない」

「俺のは長いから遊んでいると周りに目立っちゃうからさ、な?」


リーンは自分の授かりものを人に渡すのは抵抗があるようだ。

僕も同じ気持ちなのでナックのおおらかさはよくわからない。


「ナック、リーンも嫌がっているからやめようよ」

「…いいよ。一回だけなら許す」


嫌がっていたはずのリーンが何故か僕に持たせることを賛成した。

僕は断り切れずにリーンのアーティファクト「万能の柄」を手に取った。


今、僕の手の中にリーンのアーティファクトがある。

軽いような重いような、何とも言えない存在感が僕の手の中にある。


ここまではナックも出来ていた。

問題はこの後だ。


それにしてもナックは酷い。

使った瞬間に静電気の強い衝撃が手を襲ったと言っていた。

僕もその衝撃に見舞われるのだろう。


…ナックは僕が痛い目に遭えばいいと思っているのか?とちょっと疑ってしまう。

そうでなければ純粋にS級の可能性を見てみたいのかもしれない。


怖くなってきた。

静電気は怖い。


そんな時、トキタマが

「お父さんなら大丈夫だと思いますよ」

と言ってきた。

何を根拠に言っているんだろう…と思ったがよく考えればトキタマはアーティファクトなので何かわかっているのかも知れない。


トキタマの言葉で覚悟ができた。

「いくよ」

僕はリーンの真似をして頭の中にナイフを思い浮かべて右手の中のアーティファクトに意識を集中した。


「【アーティファクト】!」


出来た。

ハッキリと光のナイフの刃が柄から出ている。


「すげぇ!!」

ナックが驚いている。


「キョロは出来ちゃうんだ」

リーンは何だかつまらなそうだ。それもそうだろう。自分だけの授かりもののはずが僕なんかが使えてしまったのだから。


僕は心の中でおしまいと念じて光のナイフを消してリーンに返そうとする。


しかしナックがそれを制して

「なあ、次!次はたいまつ出せよ!!」

何故かしつこく絡んでくる。


リーンが気の毒だ。早く断ってアーティファクトを返そう。

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