第11話 トキタマ。

目を覚ました僕は周りを見渡す。

場所はさっきの村は外れで、リーンが膝枕をしてくれているのがわかる。


「疲れたら言えよ、俺も膝枕やってやるからさ」

ナックがリーンに気遣って膝枕を変わると言っている。

リーンと違って堅そうだな。


「それともウチが近いからウチに連れていくか?」

「ナック、槍斧持ちながらキョロをおぶえる?」


「大丈夫だって、キョロはイノシシより軽いんじゃね?」

「後、槍斧がキョロのお尻に刺さったりしない」

それは困るな


そんな事を思っていると、仰向けになった僕の胸に先ほどの小鳥が降りてきた。

「かわいい子鳥」

「珍しい鳥だな、初めて見る種類だ」

リーンとナックがそんな事を言っている。


「お父さん、起きた?」

小鳥が僕に話しかけてきた。

やはりこの小鳥が自立型のアーティファクトなのだろう。


「ああ、今起きたよ…。リーン、膝枕ありが…」


「小鳥が喋った!?」

「はっきりと喋った!!」

ナックとリーンが驚きの余り僕が目覚めたことに気づいていない。

王都にいると言う九官鳥と言う鳥も話をすると聞いたことがある。

それと変わらないと思うのだが、二人にはショックが大きかったようだ。


「ナック、リーン、落ち着いて」

僕がそう言うと二人は僕が目覚めたことに気が付いた。


「大丈夫か?お前急に倒れこんだんだぞ」

「本当、走っていったと思ったら倒れて驚いたわ」


やはり光ったのはめまいだったのか。

リーンの膝枕から降りて起き上がった僕は胸から右手にとまった小鳥に目を向ける。


「お父さん、初めまして。僕を産んでくれてありがとう」

小鳥は流暢に喋る。

これが自立型アーティファクトの意思疎通ができるという事か。

後ろでナックとリーンの二人がまた騒いでいるが二人に構うことなく僕は話を続ける。


「君は、僕のアーティファクト「時のタマゴ」だね?」

「はい。無事に産まれてきました。きれいにタマゴを開けられたんですよ。見てください」

そう言うと地面に落ちたタマゴの殻?を見ると確かに奇麗に横一文字でタマゴが開いている。割れているのではなく、開いているという方が的確で本当に開けたというのがわかる。


「もっと早く産まれてこられたんですが、そのタマゴの殻はこれから僕のお家になるので奇麗に開くようにずっと突きました」


そうか、あのコツコツと言う音は奇麗に殻を開くための音だったのか。


「お父さん、なので殻はきちんとくっつけてポケットに入れておいてくださいね」


僕は言われた通りに殻を拾ってくっつけてみる。

多少のがたつきは感じるが箱のように奇麗に合わさった。

そしてそれをポケットにしまう。

触った感じは頑丈だったので割れないとは思うが、もう少ししまう場所に関しては考えた方がいいかもしれない。


「お父さん、ありがとうございます。それでは次に僕に名前をください」

何と名付けを頼まれてしまった。


正直、ここまで意思疎通ができると思っていなかったので名前とか考えていなかった。

「「時のタマゴ」から産まれてきたから…[トキタマ]でどうかな?」


「安直!」

「もう少し格好いい名前を付けてやれよ。」

後ろの二人が突っ込みを入れてきたが、僕の語彙力ではこのくらいが限界です。ごめんなさい。


「トキタマ!僕はトキタマ!!」

当の本人は喜んで僕の周りを飛び回っている。


「あー、本人が喜んでいるんだったらいいんじゃね?」

ナックが少し呆れた感じでリーンに話しかけている。

リーンも「そうね」と言って受け入れてくれた。


「お父さんのお友達の人、はじめまして。僕はトキタマです」


「は…はじめまして」

「よろしくお願いします」

トキタマに話しかけられて二人とも面食らっている。

確かに、自立型のアーティファクトが小鳥で喋って話しかけてくるって言うのは物珍しいよな。


「とりあえず宴の場に戻ろうか?」

僕がそう言うと二人とも「賛成」と言ってくれた。


トキタマにはどんな能力があって、どんな注意点があるのだろう?これは宴に戻ってからトキタマに聞いて見よう。

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