第6話 能力と注意点。

「さて、予定より時間が大分過ぎてしまっていますので、簡単にですが二人にアーティファクトの使い方を説明しますね。

個別の使い方もあるので今のうちにナックとキヨロスには説明をしてしまいます」


「はい!よろしくお願いします!!」

ナックは早く使いたいようでさっきから何かと手で槍斧を触ったり小さく振ったりしている。


「まず、基本的な事ですがアーティファクトの力を使うにはアーティファクトに意識を向けて使いたい能力を思い浮かべながら【アーティファクト】と呼びかける事で発動します。あ…ナックはまだ使わないでくださいね」


横を見るとナックが槍斧を構えている。

僕はまだどんな能力があるのかわからないのに早速使おうとする辺りがナックらしくて可笑しくなってしまった。


「次にアーティファクトの能力ですが、これは同じアーティファクトを持つ人が近くにいれば教えてもらう事も出来るのですが、生憎村に「大地の槍斧」の持ち主は居ません。なので3つの能力と注意点を説明しますね」


「うおぉっ、すげえ!3つも能力があるのかよ!父さんの「剛力の斧」は切れ味が増して硬い木もサクサク切れるだったのに!?」

いちいち反応してて話が進まないな…神の使いは怒るのではないかと思ったが気にすることなく話を続けている。


「まず、能力ですが、

1つ目は[刃こぼれなどをして切れ味が悪くなってきた時に切れ味を元に戻す事]が出来ます。

2つ目は[槍斧の重さを感じなくなる事]が出来ます。

3つ目は[槍斧の威力を増す事]が出来ます。

この3つが能力です。

次に注意点ですが、この能力は大地の力を使う事で発揮されますので、[海や川、湖などのそばでは発揮される力が半分以下]になります。後は[痩せた土地や毒沼などの汚れた大地では全く力が出せません]これが注意点です」


これでは注意点と言うより欠点ではないのか。

「剛力の斧」よりいくら強くても限定された条件でしか能力が発揮されないのはどうなのであろうか?


「え!?欠点あるんですか!?」

ナックは思わず神の使いに聞いてしまっていた。


そう、村の誰もが持っているアーティファクトを見る限り欠点なんて聞いたことがない。

確かに能力は木をサクサク切れる斧とか切れ味の落ちないナイフやご飯の美味しくなるフライパンだが注意点なんて話は聞かなかった。

父さん達が隠し事をするとも思えない。

コレは何でだろう?


「ナック、あなたのアーティファクトはB級なのです。アーティファクトはC級以外、B級以上のものには何かしらの注意点が伴います」

僕たちの疑問に答えるように神の使いが説明をしてくれる。


「え!?俺のアーティファクトはB級なんですか!?キョロを除けば俺のアーティファクトが村一番…」

ナックが嬉しそうに驚いている。


そんな話をしながら僕はリーンの事が気になった。

神の使いはまた僕の心を読んだのか

「リーンはまだ半分にも到達して居ませんよ、今彼女は箱庭の景色を楽しんで鼻歌を歌っていますよ」


そう言ってリーンの現状を教えてくれた。

「さてナック、あなたは川のほとりでは力が半分以下になってしまいます。

一度川が見えなくなる辺りまで離れてアーティファクトの力を試してみてください。

ただしあまり周りを壊しすぎない事を意識してくださいね」


「はい!!わかりました!!」

1秒でも早く試してみたいナックは大急ぎで走って行ってしまった。

このタイミングでの神の使いの提案は多分…


「その通りですよキヨロス。私はあなたと二人で話さなければならないのです」

S級アーティファクト…一体どんな能力と注意点があるのだろうか…


「まず、初めに伝えなければいけない事があります。

私はあなたに「時のタマゴ」の能力と注意点を告げる事は出来ません」


何と拍子抜けだろう。

僕は身構えていたが思わず転んでしまいそうになる。


「ただ、どういうものかと言う事は伝えられます。

「時のタマゴ」は人間には触れることが不可能な時を司るアーティファクトの1つです。

この能力は家族の暮らしを便利には出来ませんが、村のみんなを幸せにすると言う事は可能です。

次に、このアーティファクトはまだ完全体ではありません。後数時間もすれば本当の姿で貴方の前に現れます。

いくつかのS級アーティファクトには[自立型]と言う、話しをしたり意思の疎通が可能なアーティファクトがあり、この「時のタマゴ」も真の姿は自立型のアーティファクトです。能力は「時のタマゴ」自身に教わるといいでしょう」


いきなり色々と話をされて僕は面食らってしまったが、数時間後にはタマゴから何かが現れて僕と意思疎通が出来るらしい。

そして、その力は村のみんなを幸せにできるらしい。

それだけで僕は十分だと思ってしまった。

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