第3話 ナックが戻るまで。

あの体が箱に吸い込まれてしまうのには驚いた。


「アーティファクトって凄いのね」

リーンも思わず口にしてしまっている。

それにしても引き返さないのは何故なんだろう?

それに僕たちはこんな軽装で行って良いところなのだろうか?


「大丈夫ですよ」

また心を読まれた。


正確には心を読まれた訳では無いらしいが、僕の疑問や心配は神の使いには全て見抜かれてしまう。


「引き返すと散歩道が迷路のように複雑になるんですよ。散歩道なら軽装でも問題無いですが迷路になると流石に心許ないですよね。それに迷路にしても授かるアーティファクトに変わりは無いんですよ。理由はわかりませんが疑り深い子への神様からのイタズラですかね?」


それが本当なら神様は僕のような子供に神様はイタズラをしてしまうのだろう。

聞いておいて良かった。


そうだとしても、やはりナックが帰ってこない事には心配でならない。


「中とか、今ナックがどこらへんかとか見られないんですか?」

リーンも初めてのことで心配になって神の使いに聞いている。


「あなた方には見えませんが、これは私のアーティファクトなので私には見えますよ。

もう少しで祭壇です。

次の人は心の準備をしながらもう少し待っていてくださいね」


その言葉通り、少ししたら箱が光って中からナックが出てきた。

手には槍に斧が付いた武器を持っていた。


「ナックお帰り」

「ただいま…」


ナックはどんよりとした顔をしている。

理由は聞くまでも無いだろ。

あれだけ欲しがっていた「剛力の斧」ではない別のアーティファクトを授かったのだから…


「先っぽに斧が付いてるのね。良かったじゃない?」

リーンがフォローにならないフォローを入れている。


「ああ…そうだな。」


「おかえりなさいナック。それは「大地の槍斧」ですね」

「「大地の槍斧」…?木は切れますか?」


「え?…え?木?木ですか…切れると思いますよ」

「本当ですか?俺、父さんと山に木を切りに行けますか?」


「ええ、その槍斧なら練習をすれば山道に落ちている邪魔な大岩も壊せますし村に入り込んだ野生動物も退治できます。村の役にも立てますよ」


「うぉおぉぉぉっ!やったぁぁぁ!!!父さんやったよ!!」

さっきまでのどんよりした顔が嘘のように喜ぶナック。

ホッと僕とリーンは胸をなでおろした。


「良かったなナック、それで散歩道はどうだった?」

「ああ散歩道か、不思議なんだよな、今は夏の手前なのに箱庭の中は紅葉なんだよ、それで一本道だったんだけど石畳の道を引き返さないで進むと祭壇があったんだよ。景色が奇麗で気持ちよかったよー」


ナックの表情を見ると本当に軽装で問題無さそうだ


「さて、次は誰が行きますか?」

「僕が行きます」


僕はリーンが安心して行けるか僕自身で確かめておきたくて名乗り出た。

「キョロ、やる気だな!」

「先に行くって思わなかったわ」

僕の申し出にナックとリーンが驚いている。


「ではキヨロス、行ってきなさい」

その言葉を聞き終わる前に僕は光に吸い込まれて行った…。

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