異世界信長4

 信長がサッカーをしなくなってからまもなくのことだった。

 北条攻めの司令官だった”去年きたやつ”が、敵方の正木なんとかという武将の奇襲を受けた中、槍で突かれて死んだ。

 殺気立つ安土城内で信長は言った。


「おい、オレ」


 そう言って俺を睨んだ。


「は? 俺ですか?」


「そうだ、これから貴様の名はオレだ」


 また意味不明だと思ったが、すぐにこれは猿やキンカンと同じ、信長が好むあだ名なのだとわかった。信長は気に入ったやつに、あだ名をつける。大抵はひどい名だが。

 居並ぶ家臣達が驚きを隠さず、騒ぎ始めた。


「なんと……大殿が」

「異世界者だからといって……」


「黙れ。おい、オレ。北条攻めの後任、貴様に任すゆえ小田原の城、落としてみせよ。槍働きは他の者にやらせ、貴様は全てを、読めばいい。わかるな?」


 つまり未来の知識をフルに駆使して前任者と同じ様になんとかしろということなのか。なんとかできなかったから去年のやつは死んだのだ。くらくらしてくる。


「あの、信長様、俺なんかではその大任……」


 そう言いかけたとき、家臣が一人駆け込んできて言った。


「申し上げます。平手政秀様、ご逝去なされました」


 その時の信長の顔は、一生忘れられない。

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