列での会話
「ねえ、君のパトロンはずいぶん君の事気に入ってるんだね。」
鑑定を受けるために数人の後ろに並んで待つと、後ろに並んだ方がそっと声をかけてきた。
とりあえず、平民は頭を下げておけばよかった気がする。
「今はいいよ。列が乱れるから。」
「ありがとうございます。」
声をかけてきたのは、いたずらな猫のような顔をしたお貴族様だった。
「君のパトロンはずいぶん急いで君を仕込んだみたいだね。貴族への接し方とか全然分かんないの、すごい心臓に悪いでしょ。」
「大変失礼いたしました。」
お貴族様はニコニコと、どこか楽しそうにしている。
「いや、僕はまだなにもないよ。ただ、もしこれから貴族と話すことがあったら相手の名前は自分からは聞かず、自分が名乗って相手も名乗るのを待つといい。それから、君は素手だからむやみに手を取ったり何かを渡したりしない方がいいと思うよ。どうしてもの時はお付きの人がいるからその人に。ああ、列が進んでるよ。前向いて。」
気が付けば少し列が進んでいた。
「ありがとうございます。」
少し進んだ後、もう一度振り返ってお礼をするとその人は何事もなかったように提出する薬を持ちながらお付きの方とお話をされていたのでそれ以上こちらからお声がけすることはせず、順番を待つことに。
『君のパトロンはずいぶん急いで君を仕込んだみたいだね。貴族への接し方とか全然分かんないの、すごい心臓に悪いでしょ。』
さっきの言葉が本当なら、きっとどうにかしないといけない。
いや、わざわざ言ってくるほどだからきっと教える必要もないほどに当たり前で覚えるまでもないことだったのかもしれない。気をつけないと。
「次の者、こちらへ。内容は……どういうことだ?」
作った薬と配布されたレシピを渡すと鑑定の役人は眉をひそめてこちらを見てきた。
「品質になにか問題などございましたか。」
「いや、品質はなにも問題ない。むしろ素晴らしいくらいだ。君は北の平民となっているが間違いないかね?」
「はい、ごく小さな町からやってまいりました平民の娘にございます。」
「君の家族に貴族にかつて連なっていた人はいるかい。」
なんでそんなことを聞くんだろう。
そんなのは服や今までの作法を見ればわかるでしょうに。
「いえ、そのような話は聞いたことありません。」
「そうか。ありがとう。君は合格だ。これで試験は全行程終了。ここを出たら君の後見人と一緒に院長室に来るように。そこで詳しい話をするからね。」
「かしこまりました。ありがとうございます。」
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