その45 合格ライン
「よし、もう昨日からずっと私の模試も満点取れてるし、合格は確実になったわね。」
ルースちゃんはうれしそうにそう言うと、添削した用紙を箱にしまった。
「それにしても2週間でここまで仕上げるとはね、さすが私が見込んだだけあるわ。」
「ありがとうございます。本当に街を出て薬師院の試験に行くんですね。」
「もしかしてまだ私にはそんな才能も能力もありません~って言うつもり?」
「いえ、思っていた以上に解けましたし、皆に頑張れって言ってもらったので、頑張ります。」
「本当に謙虚というか、なんというか。まあ、でもそれで自信をつけて活躍できるようになれば万々歳よ。私のほうも頑張らなきゃいけないからね。」
「そういえばルースちゃんは学校どうするんですか?王族の方は学校はないとか?」
「いや、そんなことは無いわ。あなたと同じ王都にある学校に通うの。とはいっても安全面とか色々あるからごく一部の人間しか入れない敷地にある特別学校みたいなところだけどね。ちょうど薬師院は裏手の通りを行けば遊びに行ける距離だから時々こうやって遊べるわよ。」
「そうですか。」
「王都はここよりもたくさんお店があるからね。私のすきな店もたくさんあるからそれを見て回るのもいいわね。」
「そうですね。まずは、試験頑張ります。」
「まあ、そんなに根を詰めなくてもいいわ。今日くらい、友達と遊んでもいいんじゃない?」
「そう、ですかね。」
「そ、気分転換も大事。ちゃんと休みなさい。仕事からは解放されたけど、勉強で根詰めて倒れたなんてことになったら元も子もないわ。」
「じゃあ、今日は森にでも行ってきます。」
「ああ、そうね。そうだ。良い物できたからこれあげるわ。」
そう言うとルースちゃんは机の引き出しから細い鎖のペンダントを取り出した。
「今の私が作れる一番強力な護符。作動したら私に一報入るようになっているし、呪術とかには自動で反射するようになってる。もし自分で危険を知らせたかったらペンダントトップを噛むか、ピンを抜けば緊急を知らせる光ののろしが上がるようになってる。まあ、そこまで行く前に私に一報入ると思うけど。」
「ありがとうございます。これでもう、色々おびえなくてもいいんですね。」
「そのペンダントトップ、裏に王家の紋章、私の紋も書かれているから、必要になったときはカバーを外してそれを見せればいいわ。遠慮せず使いなさいね。」
「……はい。」
ルースちゃんの気持ちがあまりにもうれしくて、本当にルースちゃんとの友情は大事にしようと思った。多分、ここまで色々考えてくれる人はそうそういない。
「さ、早くお散歩に行きなさいな。」
さっぱりとした声が、私を外へ連れ出す。
「楽しんでおいで。」
「うん。行ってくる。」
ああ、ずいぶん久しぶりの街は2週間の間にすっかり春になっていた。
森はぬかるんでいるだろうから、靴を履き替える。
大丈夫、春の香りはそこまで来てる。
今日はめいっぱいぼーっとしてこよう。
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